10月第2週の 日経平均株価 はついに4万8000円に到達し最高値を更新しました。
総裁選明けの10/6には2175円上昇し、変動率も4.75%に至りました。この水準まで変動したのは、3月の下落時以来です。
ただし、その後はそのまま上昇が続くことなく、大きくても10/9の1.77%の変動にとどまり、過熱感を見るテクニカル指標RSIで日経平均株価を見ると、引き続き過熱感が高まっている状況です。
このような状況の日本株市場ですが、ここからどのように推移するのでしょうか?
そこで今回も相場の動きを数値で見える化した「株トレンド指数」や先週の動向をもとに、今週の株式市場の動向や、今後の動向について考えていきましょう。
今週の相場振り返り — 日経平均株価 と株式市場全体の変動
こちらをご覧ください。こちらは9/26〜10/9の日経平均株価と株トレンド指数の状況です。

株トレンド指数は、以下のような4つの指数で構成されています。
・天井指数…「170」付近で、相場全体の上昇トレンドが終焉する傾向
・底値指数…「220~420」付近で、相場全体が底値に近づき適正株価まで回復傾向
・押し目買い指数…30に近い水準になると押し目買い戦略が機能しやすい傾向
・空売り指数…「50」付近で、相場全体の上昇にブレーキが掛かる傾向
株トレンド指数から見る今週の日本株市場の特長
今週の株式市場は、日経平均株価と株式市場全体が”おおよそ連動している週”でした。
ただし、日経平均株価だけを基準に相場分析する人と、私たちのように株トレンド指数も使って相場分析する人では、差異があったでしょう。
なぜなら、日経平均株価の上昇ほど、株式市場全体は上昇していなかったからです。
加えて、日経平均株価だけを見ると、先週までのボックス圏を上抜けしたように見受けられますが、株式市場全体は、まだボックス圏内を推移しているからです。
全体としては、いずれの指標を見ても上昇していたのですが「どれくらい上昇しているか」の判断が、両者で差異が生じてしまう週でもありました。
今の時点で実際の損益には影響していないと思いますが、日経平均株価がいきなり上昇したことで、日本株が上昇したと錯覚したか、それとも冷静に見ることができたかの違いはありました。
今後は、ここでの上昇幅の捉え方の違いが、次に発生するトレンドに向けた動きに違いが出てくるかもしれません。
日経平均株価 と株式市場全体の動きを比較
では、詳細を見てみましょう。週初め10/6の日経平均株価は4.75%上昇しました。この変動幅は、冒頭でお伝えした通り3月の下落時以来です。
円単位では2175円上昇し、年初来高値を大幅に更新しました。自民党総裁選の様子見が終わり、一気に上昇した印象です。
ただし、ここで注意しなければならないことがあります。これまでも何度も指摘してきた通り、日経平均株価がこの水準までくると、円単位の変動にはあまり意味がないということです。
同じ1%の変動でも円単位での変動がとても大きくなる水準まできています。今回も約5%の変動で約2000円も変動しています。
もし、これが1万円台の水準であれば話は違います。それをふまえると、円単位での変動や、それに伴う高値更新などは特段意味をもたなくなってくるでしょう。
では、同日の株トレンド指数を見ると、上昇傾向を示す天井指数が60まで上昇しました。この水準は9月上旬以来です。
しかし、そのときと違って段階的に上昇した場面ではなく、様子見明けからの急上昇のような動きでしたので、これは突発的な上昇だと読み取れます。
このように、同日は一方は2175円上昇と大幅上昇したように見え、一方は単なる突発的な上昇として判断と、違う読み取りができる日でした。
10/7の日経平均株価は、0.01%上昇しました。円単位でも6円上昇ですので、ほぼ変動なしです。
株トレンド指数を見ると、上昇傾向を示す天井指数の水準が60から31と約半分まで下がりました。
ここは日経平均株価と株トレンド指数が連動したと考えられます。天井指数の勢いが半減し上昇勢いが下がったことで、日経平均株価も水平に推移したと考えられます。
10/8の日経平均株価は、0.45%下落しました。円単位では215円下落です。1%未満の変動ですので、ここもほぼ水平状態で推移したと読み取れます。
株トレンド指数も、同じように上昇傾向を示す天井指数の水準がやや下がりました。日経平均株価の1%未満の下落と同じように、ほぼ水平状態での下がり方です。
週の後半10/9の日経平均株価は1.77%上昇しました。円単位では845円上昇です。日経平均株価を変動率で捉えている人であれば、ここを小幅上昇と捉えたでしょう。
一方、円単位で捉えている人は、大幅上昇と誤った捉え方をしてしまったかもしれません。
前述の通り、日経平均株価はこの水準までくると円単位での変動の意味をあまりなさなくなってきます。その意味を表した良い例かもしれません。
1.77%の上昇ですので、水平状態ではありませんが、845円の上昇の意味合いとは全く違い、よくある日々の変動の範囲におさまったのが、この日の日経平均株価だと考えられます。
株トレンド指数を見ると、上昇傾向を示す天井指数が再び54まで上昇しました。株式市場を牽引するような上昇ではありませんが、株式市場全体が小さく上昇しました。
つまり、日経平均株価はよくある日々の変動の範囲でしたが、株式市場全体は、その変動幅よりは上昇したと考えられます。
今週の市場動向と 日経平均株価 の変動のポイント
このように今週の株式市場は、日経平均株価と株トレンド指数が連動まではいかないものの、おおよそ連動している週でした。
ただし、これまでの内訳の通り、細部は両者に差異があります。日経平均株価を円単位で見ている人にとっては、今週は「歴史的上昇」だったかもしれません。
しかし、株トレンド指数で株式市場全体の内訳を見ていくと、そこまで上昇していないことが分かります。
あくまで、自民党総裁選の結果が出るまでの様子見が明けたことで、それまで溜まっていたものが一時的に放出された程度の上昇だと判断できます。
また、このような状況をふまえて日経平均株価を考えると、日経平均株価も採用銘柄全体が上昇したのではなく、一部の値がさ株などが上昇したことで水準が上がったのではないかと推測されます。
だから、円単位の水準だけが上がり、株トレンド指数の通り株式市場全体は、小さな上昇にとどまっていることに整合性が取れます。
今週の株式市場を見る限り、日経平均株価も株式市場全体も、一見ボックス圏を上抜けしたように見えますが、まだそこまでの判断は早いと考えられます。
今後の推移次第では、日経平均株価だけは上抜けしたと言えるかもしれませんが、現時点では一時的な上昇のように見えます。
または、ボックス圏の水準が上がる上昇になったということもあります。今の時点では判断が難しいですが、上昇トレンドに入ったわけではないというのは、どの指標を見ても言えるでしょう。
日経平均株価 の動向を徹底分析する
日経平均株価を基準に見ると、今週の上昇によって、「上値:4万4000円(誤差+1500円程度)~下値:4万2000円」を上抜けしたように見えます。
実際に、4万8000円台に到達していますので、そう判断しても良いように見えます。
ただし、ボックス圏の抜け方を考えると、そうとも言えません。先週まで自民党総裁選の結果待ちの状態が続きました。
これにより、株式市場は動きたくても動けない状況が続きました。そこから結果が出たことで、それまで動けなかった分が一時的に放出されているのが今週です。
もし、これが通常のボックス圏のように何が要因か分からないのであれば、今週は上抜けと判断できるかもしれません。
しかし、今回のボックス圏は背景に自民党総裁選があったことが明確です。恣意的なボックス圏でしたので、総裁選が終われば動き出すことは明白でした。
その点を考慮すると、これは通常のボックス圏のでき方や抜け方とは違うので、まだ上抜けと判断するのは早いと思われます。
あくまで、「一時的な上昇により上抜けしているように見える」と考えたほうが良いでしょう。
これから新首相の決定や、決定後に政策の打ち出しなどイベントがありますので、その後は展開が変わると思います。
ですが、現時点では引き続き「上値:4万4000円(誤差+1500円程度)~下値:4万2000円」のボックス圏を一時的に上抜けしていると考えるのが良いでしょう。
もしくは、今回の上昇でボックス圏の水準が上がった可能性があるので、「上値:4万5000円(誤差+2500円程度)~下値:4万3000円」のボックス圏と見ても良いかもしれません。
一方、株トレンド指数を見ると、今週は上昇傾向を示す天井指数の水準が上がっているものの、9月上旬に発生したときの水準にも届いていないことが分かります。
同時に、上昇にブレーキを掛ける空売り指数の水準が、それ以前の上昇時に比べて上がっていることが分かります。
空売り指数が、ここでブレーキの役割を果たし切るとは思いませんが、ここまで水準が高いと、天井指数がここから伸びるのは難しいかもしれません。
そのようなことを考慮すると、今週の小さな上昇はまだ本格的な上昇に向けたものではなく、いったんボックス圏を一時的に抜けたときのものだと考えられます。
ここから一気に上昇に向かうのではなく、ここでいったん動きが生まれ、少しずつ動く準備をする序章だとも捉えられます。
まだ上昇することが確定したわけではありませんが、少なくとも株式市場全体は、上昇に向けて動き出そうとしていると考えられます。
ただ、日経平均株価の動きとは違って、まだボックス圏の上値付近でもみ合いをしているような状況なので、急な材料が発生しない限り、現状が続くでしょう。
来週の日経平均株価の予想シナリオ
このように今週の株式市場は、日経平均株価を見るか、株トレンド指数を見るかで状況が違います。両者の動きを週単位で見るとおおよそ連動していますが、期間を広げると違うことが分かります。
ただし、総合するとまだボックス圏を上抜けできていないと読み取れます。前述の通り、日経平均株価のボックス圏の範囲は以下のように見ておくのが良いでしょう。
▼通常
上値:4万4000円(誤差+1500円程度)~下値:4万2000円
▼ボックス圏の水準が上がったと仮定の場合
上値:4万5000円(誤差+2500円程度)~下値:4万3000円
今の日経平均株価の推移は「ボックス圏の水準が上がったと仮定の場合」に近いと考えられます。
もし、本当に上抜けするならば「4万9500円~5万円」に到達したときでしょう。そのときには、株式市場全体も上昇していると予測されます。
いずれにしても、今の日本株市場は「まだボックス圏を上抜けしていない」と考えるのが妥当です。
そう考えると、次のイベント「新首相決定」「新政策の打ち出し」があるまで、ボックス圏を上抜けしているように見えてしていない状況が続くかもしれません。
日経平均株価だけを追いかけると錯覚を起こしやすい水準ですので、株トレンド指数を必ず組み合わせて、状況を見誤らないようにしていきましょう。
投資主体別売買動向から読み解く需給バランス
補足としての日本株市場の根底部分である株式市場全体の需給バランスも見ておきましょう。
・外国人投資家:売り越し → 大きく買い越しに転換(↗)
・個人投資家:わずかに買い越し → 買い越し拡大(↗)
・日本の機関投資家:売り越し → 売り越しを縮小(↗)

三者をまとめると、全体の需給バランスはグラフのように「明確な買い越し」です。先週は明確な売り越しでしたので、完全に転換です。
ここからも、これまでは自民党総裁選の結果の様子見ムードが続き、期待に近い結果が出そうだとわかったことで需給バランスが買い越しに転換したと考えられます。
ただし、動きはまだ三者三様です。各投資家の動きの大きさには違いがあり、大相場になるような需給バランスには至っていないことが分かります。
では、改めて各投資家の詳細を見てみましょう。
外国人投資家の動きとその示唆
売り越しから一気に大きく買い越しに転換しました。この水準は、2024年4月1週以来です。
アベノミクス相場までさかのぼっても、続くのは2023年4月2週の買い越し水準です。
アベノミクス相場が2012年末から開始したと考えると、10年以上の期間で、この水準の買い越しは今回を含め3回しかありません。
この点をふまえると、外国人投資家は新首相になる確率の高い自民党新総裁の政策などに大きく期待していることが分かります。
ただ、これまでのデータを見ると、外国人投資家はここまで買い越しても、その後はなだらかな買い越しになる傾向があります。
その点は、今後注意すべき動きでしょう。
個人投資家の傾向と注意点
ほぼニュートラルに近い買い越しから、買い越しに拡大しました。ただし、まだ明確な買い越しの水準には至っていません。
このデータは自民党総裁選の結果が出る前ですので、外国人投資家のように結果の予測に向かって一気に動き出すのが難しかったという印象です。
どちらかと言えば、良い方向へ行くのではないかという部分も含まれ、このような買い越しになっているのではないかと考えられます。
もし個人投資家が積極的に動き出すのであれば、やはり新首相が決まり、アベノミクスのような分かりやすい金融政策が出たときになるのかもしれません。
それまでは、外国人投資家のような積極的な動きは難しいでしょう。
日本の機関投資家の今後
三者の中で唯一売り越しでした。ただし、ほぼニュートラルの売り越しです。
まだ自民党総裁選の結果が出る前でしたので、次に動くときに資金を動かせるように、直前にキャッシュポジションを大きくしたのかもしれません。
まだ、今週の株式市場が大きく動き出していないことをふまえると、彼らは新首相と政策が固まるまで様子見するのかもしれません。
もし、事前に予測がある程度固まってきたら、一気に動き出すことも想定されます。
いずれにしても、ここを節目と見て、新たな投資先に一気に投資するようなイメージで、これから動くのかもしれません。
国内外投資家の売買動向から見た今週の見通し
以上が三者の状況です。このデータは自民党総裁選の結果が出る前のものですが、三者三様の動きをしていることが分かります。
外国人投資家は積極策、個人投資家は様子見に近い状況、日本の機関投資家は動き出すタイミングを待っているという雰囲気があります。
ただ、外国人投資家がこれ以上の水準で買い越してくることはデータ上ありませんので、ここからは国内の投資家がどのような動きをするかがポイントになるでしょう。
個人投資家はまだ慎重に見えるので、どちらかと言えば、国内の機関投資家がどのような動きをするかが、よりポイントになるかもしれません。
過半数割れした与党ということもあり、自民党新総裁=新首相とは100%言い切れないこともあり、動き出したいが確定するまで待っているようにも見えます。
つまり、予測に反するマイナスのサプライズがなければ、ここから日本の機関投資家が買い越しにまわり、日本株市場を押し上げることも想定されるでしょう。
いずれにしても、まだそのタイミングではないので予想ではありますが、順当に新首相が決まれば、このようなシナリオも想定されるでしょう。
まとめと投資家へのワンポイントアドバイス
このように今週の株式市場は「日経平均株価の水準=株式市場全体の動きではない」状況です。引き続き両者ともボックス圏を推移していると考えられます。
繰り返しになりますが、日経平均株価のボックス圏の目安は以下の通りです。
▼通常
上値:4万4000円(誤差+1500円程度)~下値:4万2000円
▼ボックス圏の水準が上がったと仮定の場合
上値:4万5000円(誤差+2500円程度)~下値:4万3000円
今は、一時的に「ボックス圏の水準が上がったと仮定の場合」にきています。
メディアなどでは「高市トレード」の文字も目立ち、いかにも金融市場に動きが出ているように見えます。しかし実際は、ここでの分析の通りそこまで動いていません。
そのようなこともありますので、週明けの株式市場では「日経平均株価の動きに惑わされない」のがポイントになるでしょう。
繰り返しお伝えしている通り、この水準までくると円単位の推移や、円単位の水準にはあまり価値がありません。
日経平均株価よりも、株式市場全体がどのように動いているのかのほうが、相場環境を適切に捉えることができます。
よって、ここからは上記のようなボックス圏の目安を持っても良いですが、それは目安として、株式市場の実態はできるだけ株トレンド指数も組み合わせて見ていくのが良いでしょう。
例えば、日経平均株価が1000円上昇したと見ても、すぐに大幅上昇と判断せず、天井指数の水準がどうなっているかなど、そういった見方をしていくことをオススメします。
日経平均株価の水準が上がれば上がるほど、株式市場全体の実態がつかみにくくなります。
もうその水準に届き、ここからはより分からなくなる水準ですので、必ず株トレンド指数を組み合わせて状況を把握していきましょう。
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▼ご注意▼
※1.こちらの分析結果はあくまでも日本株市場全体の傾向をもとにした内容です。個別株の動向と必ずしも一致するわけではありません。あくまでも市場全体の動向として、ご参考くださいませ。
※2.本記事は2025/10/9(木)時点の株式市場の状況をもとに執筆しました。データや分析内容については、誤差が生じる場合がございます。予めご了承くださいませ。