執筆者: 秋山大介|データ・アナリスト| プロフィール詳細
(独自の「株トレンド指数」を開発・運用。需給バランスに基づく分析で定評あり。)
10月第3週の 日経平均株価 が再上昇し4万8000円の高値圏を推移しています。
公明党の連立離脱の影響か、週明け10/14の日経平均株価は約2.6%下落し、4万7000円を割りました。しかし、続落することなく再上昇しています。
参考データではありますが、過熱感を見るテクニカル指標RSIでは日経平均株価先週までは過熱感がありましたが、今週は中立に近い状態に変化しています。
このような状況の日本株市場ですが、ここからどのように推移するのでしょうか?
そこで今回も相場の動きを数値で見える化した「株トレンド指数」や先週の動向をもとに、今週の株式市場の動向や、今後の動向について考えていきましょう。
【株トレンド指数で分析】今週の相場振り返り: 日経平均株価 と株式市場全体の推移
こちらをご覧ください。こちらは10/2〜10/16の日経平均株価と株トレンド指数の状況です(株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら)。

株トレンド指数は、以下のような4つの指数で構成されています。
・天井指数…「170」付近で、相場全体の上昇トレンドが終焉する傾向
・底値指数…「220~420」付近で、相場全体が底値に近づき適正株価まで回復傾向
・押し目買い指数…30に近い水準になると押し目買い戦略が機能しやすい傾向
・空売り指数…「50」付近で、相場全体の上昇にブレーキが掛かる傾向
>>株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら
株トレンド指数から見る今週の日本株市場の特長
今週の株式市場は、営業日が少ないので参考データにはなりますが、日経平均株価と株式市場全体が”あまり連動していない週”でした。
見方によっては、連動しているとも読み取れますが、細部を見ない限り読み取れない内容ですので、全体感としては”あまり連動していない”と捉えるのが妥当でしょう。
そのようなこともあり、日経平均株価だけを基準に相場分析する人と、私たちのように株トレンド指数も含めて分析する人では差異があったと考えられます。
日経平均株価だけを基準にする人にとっては、政治のニュースに溢れていることもあり、掴みどころのない相場だったと考えられます。
一方、株トレンド指数も含めて分析する人にとっては、空売り指数優位の状態が続いた週ということもあり、次の展開への準備期間の相場だったと読み取れます。
イメージとしては上抜けまたは下抜け前のボックス圏を推移している状態です。
このように、全体としてはどちらの指標を見ても横ばい状態だったのですが、内訳の捉え方で全く状況が違うことが分かります。
実際の損益に影響するような状況ではありませんが、この難しい局面での相場の捉え方は両者で違っていたと考えられます。
日経平均株価 と株式市場全体の動きを比較
では、詳細を見てみましょう。週初め10/14の日経平均株価は2.6%下落しました。円単位では1241円下落です。
先週末に公明党が連立離脱を発表したことが影響したのか、4月上旬の下落時に次ぐ下落幅でした。
暴落や急落というほどの下落ではありませんので、4月以降では大きく感じる下落といったところでしょう。
ただし、円単位で捉える投資家にとっては「公明党連立離脱→大幅下落」などの印象を受けた日だったかもしれません。
しかし、これまで何度かお伝えしている通り、日経平均株価はこの水準までくると円単位の変動で把握すると錯覚を起こしやすい状況です。
極端に言えば、再び2万円以下の水準に戻らない限り、ここからは円単位での変動の捉え方はあまり意味をなさないでしょう。それを象徴したような動きを、この日にしました。
株トレンド指数を見ると、日経平均株価は下落しましたが、株式市場全体はほとんど下落していないことが分かります。
下落傾向を示す底値指数が14の水準まできているので下落傾向に見える部分もありますが、これも通常よりは多少下落している程度の話です。
むしろ、空売り指数や押し目買い指数の水準のほうが高いので、株式市場全体は下落したかもしれないという程度でした。
また、先週末から10/14にかけて押し目買いは「16」まで上昇しています。押し目買いは2桁に届くことはあまりありません。
その押し目買い指数が2桁に到達していますので、ここでは「押し目買いの動き」をする可能性が高まったと判断できました。
このような状況でしたので、この10/14は日経平均株価の下落を変動率で捉えたとしても株式市場全体は、そこまでの下落ではなかったと判断できます。
10/15は、日経平均株価が1.76%上昇しました。円単位では825円上昇です。前日は1241円下落、今日は825円上昇でしたので、円単位で捉える人にとっては、株式市場が大きく上下したと捉えたかもしれません。
変動率で見ると前日までの押し目買い指数の影響もあってか、順調に押し目買いの動きになり再上昇していることが分かります。
ただ、変動率と円単位のどちらで捉えていたとしても、直近にこのような上下の変動幅がなかったことから、株式市場が大きく動いているが、方向感が全く分からない状況だったでしょう。
株トレンド指数を見ると、全体としては前日と同じような状況であることが分かります。
前日よりは上昇傾向を示す天井指数の水準が上がっているので小幅上昇していると考えられます。
一方で、下落傾向を示す底値指数の水準があまり下がっていないことや、空売り指数が下がっていることをふまえると、日経平均株価と違い株式市場全体は多少下落していたかもしれません。
とはいえ、前日からあまり変動がない状況でしたので、株トレンド指数を見る限り株式市場全体は、前日からほぼ横ばいに推移したと判断できました。
10/16の日経平均株価は1.27%上昇しました。円単位では607円上昇です。前日よりは物足りない上昇でしたが、10/14に下落した分を取り返しました。
株トレンド指数を見ると、下落傾向を示す底値指数の水準が少しずつ下がってきたことが分かります。
反対に上昇傾向を示す天井指数の水準が上がったので、今週の中では最も上昇傾向のある日だと判断できます。ただし、その上昇幅は大きなものではなく、小幅上昇です。
なお、今週の3日間について補足があります。今週は3日間とも空売り指数優位の状態が続きました。
細部を見ると違った側面もありますが、全体としては空売り指数が株式市場全体を動かしていました。
空売り指数優位の状況が短期間であれば、次に突発的な上昇が期待できますが、この状況が先週末から続いていることを考慮すると、これは「イレギュラーな相場」だと分析できます。
ここで改めて今週をまとめましょう。
今週の市場動向と 日経平均株価 の変動のポイント
今週の株式市場は、空売り指数優位の状態だったのでイレギュラーな相場でした。その中で、これまで見たような細部の動きがあったと考えられます。
また、この動きから株式市場全体は日経平均株価は上下したものの、横ばいに推移していたことが分かります。
そして、この動きをふまえると、日経平均株価が一時は上抜けしたようにみえましたが、その判断はまだ早いと考えられます。
このイレギュラーな相場を抜けるときに、日経平均株価の上抜けまたは状況が急転した下抜けの動きが出てくるでしょう。
おそらく、このイレギュラーな相場は、直近の政治の動向が理由だと考えられます。連日報道でゲームのように伝えられてしまっていますが、誰が誰と組むかで状況が変化しています。
それが日々変わる状況だったのが今週でしたので、それが反映されたイレギュラーな相場だったとも考えられます。
日経平均株価の徹底分析:ボックス圏継続か?上抜けの判断基準とは
日経平均株価を基準に見ると、上下はしているものの「上値:4万4000円(誤差+1500円程度)~下値:4万2000円」を上抜けしたように見えます。
ただし、先週時点でも分析した通り、まだ上抜けとは言えない状況です。だからと言って、ボックス圏の水準が上がったかと言えば、そうでもないと読み取れます。
「まだ、上抜けでもなければ、ボックス圏の水準の上昇でもない」これが今週の状況でしょう。
特に今週は、前述の通り空売り指数優位のイレギュラーな相場でした。その点もふまえると、これからどう動くか迷っているのが今週だとも言えます。
よって、ボックス圏の範囲も、まだ「上値:4万4000円(誤差+1500円程度)~下値:4万2000円」と考えて良いでしょう。
円単位で見ると、直近の数字と乖離していますが、現状は誤差の範囲の変動が一時的に大きくなっていると考えられます。
ここから政権や新首相、政策が確定すると、この誤差がなくなり現実的なボックス圏の範囲が決まるか、上抜けや下抜けしてトレンドが発生することになるでしょう。
それまで引き続き、この誤差のあるボックス圏が続きそうです。
一方、株トレンド指数を見ると、空売り指数優位のイレギュラーな相場ではあるものの、無風状態よりは動きがある程度の相場になっていることが分かります。
週単位で見るともっと動いている印象を受けましたが、期間を広げると今週の変動はないに等しいことが分かります。
この点を考慮しても、日経平均株価のボックス圏の範囲は、水準が上がっただけではなく、誤差の範囲で動いていることが分かります。
むしろ、次の動きをする前兆として、いったんトレンドがリセットに近い状態になっているようにも見えます。
空売り指数優位のイレギュラーな相場なので違う側面もありますが、やはり今の株式市場は日経平均株価の動きほど、動いていないことが分かります。
来週の日経平均株価の予想シナリオ
改めて2ヶ月間のデータで今週の株式市場を見ると、日経平均株価も株式市場全体も、週単位で見るほど動いていないと分析できます。
先週時点では、ボックス圏の上抜けは難しいですが、水準が上がった可能性がありました。
しかし、今週の動きを見る限り水準が上がることはなく、現状維持であると判断できるでしょう。
よって、日経平均株価のボックス圏の範囲も前述の通り、以下のように見ておくのが良いでしょう。
▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:4万4000円(誤差+1500円程度)~下値:4万2000円
なお、ボックス圏を上抜けと判断する一つの基準は、「4万9500円~5万円」に到達したときでしょう。
ただし、そのまま上昇トレンドが発生しなければ、2021年以降続く相場の特長である「ボックス圏から一時的に上昇して再びボックス圏」を繰り返すことになるでしょう。
投資主体別売買動向:外国人・個人・機関投資家の最新需給バランス
補足としての日本株市場の根底部分である株式市場全体の需給バランスも見ておきましょう。
・外国人投資家:売り越し → 大きく買い越しに転換(↗)
・個人投資家:わずかに買い越し → 買い越し拡大(↗)
・日本の機関投資家:売り越し → 売り越しを縮小(↗)

三者をまとめると、全体の需給バランスはグラフのように「明確な買い越し」です。
中でも、外国人投資家の買い越し水準は、2024年4月1週以来です。アベノミクス相場までさかのぼっても、続くのは2023年4月2週の買い越し水準です。
ただし、動きはまだ三者三様です。各投資家の動きの大きさには違いがあり、外国人投資家だけに明確な動きが出ていることも分かります。
では、改めて各投資家の詳細を見てみましょう。
外国人投資家の動きとその示唆
外国人投資家は、上記の通り売り越しから、とても規模の大きい買い越しに転換しました。
ただし、これまでのデータを見ると、外国人投資家はこの規模の買い越しを維持することはなく、その後はなだらかな買い越しになる傾向があります。
今、日本の政治が政権や新首相を巡り、やや右往左往している状況をふまえると、この傾向の通り、今週の時点でなだらかな買い越しに変化しているかもしれません。
今週の日経平均株価の動きを見ても、週初めこそ動いた印象ですが、変動率は約2.6%下落です。その後も1%台の上昇ですので、外国人投資家の動きは落ち着いているかもしれません。
加えて、日本の政治が必ずしも順当にいくとは限らない状況ではありますが、外国人投資家は日本株市場から引くことなく、様子見をしていると考えられます。
このような状況が予測されますので、外国人投資家が最新週までの動きはないものの、再び動き出すのは政権や新首相が確定し、政策を打ち出してからなのでしょう。
個人投資家の傾向と注意点
次は、私たち個人投資家です。規模は大きくないものの買い越しです。買い越しが9月4週よりも拡大していることをふまえると、株式市場の上昇を目論んでいるのでしょう。
ただ、前述の通り日本の政治が順当に進んでいないこともあり、最新週はこの買い越しが小さくなるか、中立に近い状態になっているかもしれません。
個人投資家は、ニュースなどの影響を敏感に受ける傾向がありますので、現状では未来予測をして突っ込めない状況だと考えられます。
よって、ここも外国人投資家と同様、政治の部分が確定しないと動くに動けない状況だと予想されます。
日本の機関投資家の今後
最後に日本の機関投資家です。三者の中で唯一売り越しですが、ほぼニュートラルの売り越しです。
まだ自民党総裁選の結果が出る前でしたので、次に動くときに資金を動かせるように、直前にキャッシュポジションを大きくしたのかもしれません。
日経平均株価の変動をふまえると、日本の機関投資家も今週はそれほど大きな動きは見せていないかもしれません。
この時点でニュートラルに近いということは、政治の状況が確定していない中ですので、引き続きニュートラルに近い動きだと予想されます。
国内外投資家の売買動向から見た今週の見通し
予想を含む内容ですが、以上が三者の状況です。もし政権や新首相が順当に進む確率が高い状況であれば、今週の予想は違っていたでしょう。
しかし、公明党の連立離脱により順当に進む確率が変化しました。その点や今週の日経平均株価の動きを考慮すると、三者とも”動くに動けない状態”になっているかもしれません。
ある程度予測はつくものの「万が一を考えてニュートラルで様子見する」それが今の状況だと考えられます。
そうなると、三者三様で仕入れる情報によって次の相場予測が変わりますので、ニュートラルに近い状態で買い越しと売り越しが変化するかもしれません。
それに連動するように日経平均株価も今週のような多少の上下を繰り返し、結果的には横ばいに推移すると考えられます。
まとめと投資家へのワンポイントアドバイス
このように今週の株式市場は一見するとボックス圏の水準が上がったように見えますが、あくまで誤差の範囲の中でボックス圏を推移していることが分かりました。
その理由としては、空売り指数優位の相場であることや、期間を広げると無風状態よりはトレンドが発生している程度だということが挙げられます。
そうなると、先週時点では候補としてあったボックス圏の水準が上がったというシナリオは消えますので、日経平均株価のボックス圏の目安は以下だと考えられます。
▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:4万4000円(誤差+1500円程度)~下値:4万2000円
実際の数字とは乖離していますが、それは誤差の範囲が一時的に大きくなっていると捉えられます。
こうなると、来週の株式市場は1/21の総理大臣指名選挙がどうなるかで左右されるでしょう。
それまでは上記のボックス圏を推移し、総理大臣指名選挙の結果次第で
- 現状維持
- 上抜けして上昇トレンド
- 下抜けして下落トレンド
のシナリオになるでしょう。順当にいくならば「現状維持」だと予測されます。期待感で一時的に上昇もあるかもしれませんが、政策が出るまでは現状維持になるでしょう。
反対に順当にいかなかった場合は、株式市場が最も嫌う「先行き不透明」に進みますので、政策が出るまでに「下抜けして下落トレンド」または「暴落」も想定されます。
いずれにしても、今の株式市場は政治に握られている状態であり、それ次第でシナリオが変化する状況です。
このようなときに、いずれか一つのシナリオに絞ってしまうと、リスクが大きくなります。
そのリスクを回避する意味でも、今は複数のシナリオを想定しながら株式市場を見ていくのが良いでしょう。
この記事は、独自の株トレンド指数を用いた分析レポートの一部です。すべての予測実績検証は過去の分析レポート一覧からご覧いただけます。
▼ご注意▼
※1.こちらの分析結果はあくまでも日本株市場全体の傾向をもとにした内容です。個別株の動向と必ずしも一致するわけではありません。あくまでも市場全体の動向として、ご参考くださいませ。
※2.本記事は2025/10/16(木)時点の株式市場の状況をもとに執筆しました。データや分析内容については、誤差が生じる場合がございます。予めご了承くださいませ。