執筆者:高橋 佑輔|株式会社SAC Technologies ストラテジスト|プロフィール詳細
システム戦略専門家|トレード歴12年・11年利益達成。某証券会社の運用の根幹となるルール策定経験に基づき、個人投資家が陥る危険な心理と対策を解説します。


【データ出典について】
当分析で利用した株価データはYahoo!ファイナンスの公表データに基づいています。

【分析ツール】
テクニカル分析および銘柄選定には、自社開発のスクリーニングソフトウェア「iTRADE」を使用しています。

2025年10月30日の第3四半期決算発表以降、株価が力強く上昇し高値圏を推移している 2914 日本たばこ産業(JT)

12/2には年初来高値も更新するなど、好調な動向を受けてアナリストによる目標株価の引き上げもあり、今後の上昇が期待できる銘柄として注目されています。

高配当銘柄の代表格として、今後の上昇に期待を寄せる投資家も多いでしょう。

果たして、JTの株価は年末から年始にかけてどこまで上昇する可能性があるのでしょうか?

本記事では、過去25年間の統計データと最新のチャート分析をもとに、年末までの予想レンジと今後のシナリオを徹底解説します。

【現状分析】高値更新が続く 2914 日本たばこ産業(JT) の背景

今年のスタート2025年1月は、JTの株価は4,000円付近を推移し緩やかな下落基調でした。2月20日には3,700円で年初来安値を更新してました。

2914 JT 日足チャート|iTRADEスクリーニングより引用
2914 JT 日足チャート|iTRADEスクリーニングより引用

その後は、トランプ関税リスクの一時的な影響を除いては段階的に上昇し、この12月には年初来高値を更新し5,962円まで上昇しています

200日移動平均線は8月までは水平状態でしたが、9月以降はやや角度を付けたまま上向いています。その上に75日・25日移動平均線の順番にならぶ「パーフェクトオーダー」になっています。

8月中旬には25日移動平均線が75日移動平均線を「ゴールデンクロス」し、長期的な上昇トレンドのサインが出ました。

そのサインの通り、第3四半期決算発表までは停滞気味でしたが決算発表後から急上昇したことで、長期的に見て上昇トレンドに入ったと判断できます

ただし、現在は節目の6,000円を前に、一旦の利益確定売りに押されて「もみ合い」の状況にあると分析します。この足踏みは、次なる上昇へのエネルギー充填なのでしょうか。

そこで、過去の傾向から12月末時点の上値・下値の予想レンジを計算し、同社の株価が年末に向けて、どこまで上昇するのか分析してみましょう。

【25年統計】12月のJT株は「極端な上昇」か「小幅下落」か

JT株が12月にどのような値動きをする傾向があるのか分析します。2000年から2024年までの25年間のデータを集計した結果、興味深い傾向が見えてきました。

期間 (2000年~2024年)上昇回数下落回数
全体の傾向12回13回
±10%以上の変動4回 (最大+30%程度)2回 (最大-13%程度)
±5%以内の小幅変動5回9回

このデータ分析の結果、例年の12月の株価は、上昇傾向と下落傾向が「ほぼ均衡している」と読み取れます。変動幅を見ると、全体の半数が5%以内の小幅変動にとどまっています。

また、上昇時と下落時では傾向が異なっていると分析します。上昇時は5%以内の変動が5回、10%以上の変動が4回と5~10%の変動になる確率は低く、小幅変動か大幅変動と極端な動きをすると分析します。

反対に下落時は、13回の下落のうち9回が5%以内の変動と、ほぼ小幅変動であることが分かります。

このデータから、12月のJT株は上昇・下落の回数がほぼ均衡しているものの「下落しても小幅で済みやすく、上昇する時は大きく跳ねる可能性がある」という特性が読み取れます。

年末・年始の株価予測:もみ合いを経て「ご祝儀相場」へ

直近の動向と、年末までの残りの期間を考慮すると、このままもみ合いが続く可能性があると分析します。

現状の株価は、12/1の終値5,865円から見て、12/24時点の終値5,775円と「約1.5%下落」し、小幅下落中です。

また、25日・75日移動平均線を見ると、乖離が大きくなっているのでの、ここから年末にかけて乖離が小さくなり、株価も落ち着くと予測されます

2914 JT 日足チャート|iTRADEスクリーニングより引用
2914 JT 日足チャート|iTRADEスクリーニングより引用

一方で、出来高も低く、RSIを見ても過熱感がないことから、ここから再上昇の可能性もあります

加えて、同社は配当の権利確定日を12月31日に控えています。高配当銘柄として注目される銘柄の代表ですので、配当を狙って買いが集中することも考えられます。

このように、この時期は上昇と下落が均衡しているので、どちらのシナリオも考えられます。ただし、下落する場合でも、それは小幅下落に留まり、ここから大幅下落の傾向に入ることは想定しにくいです。

これもふまえると、やはり直近のもみ合いが続くのが第一のシナリオになるでしょう。そして、1月は上昇傾向がありますので、その傾向にのり大幅上昇していくと推測されます。

第二のシナリオは、ご祝儀相場を待たず配当の権利確定日に向けて買いが集中し、株価が再上昇することです。

現時点では、いずれのシナリオも考えられる状況ですので、両面で見ていくと良いでしょう。

では、この分析結果を元にすると、同社の12月末時点の株価予想レンジはどれくらいになるのでしょうか?

12月末の目標株価予測レンジ:上値6,429円/下値5,601円

これまでの株価をデータ分析すると、12月末の株価は、平均的な上昇幅は約9.6%、平均的な下落幅は約4.5%と考えられます。よって、12月末の株価の予想レンジは以下の通りです。

【予測レンジ(目標株価)】
上値目安:6,429円
下値目安:5,601円

※12/1終値5,865円を基準に計算

また、下のグラフや過去25年統計の通り、上昇時は約10%と大幅上昇、下落時は5%に以内の小幅下落と、上昇と下落で変動幅が違うと予測されます。

直近の株価はヤフーファイナンスをご参照くださいませ

なお、直近の動向をふまえた分析では、もみ合いが続くと予測されます。ですが、統計分析だけを見ると、上下の変動が均衡しています。

その点をふまえると、これまでの上昇時や下落時のどちらかの傾向に合致するというよりは、基準値を上下5%以内の小幅変動で推移する確率が高いと予測します。

よって、予想レンジは上のような範囲ですが、実際は±5%以内を月末まで推移すると考えておくと良いでしょう。

今後のシナリオ:上昇の条件と注意すべきリスク

上昇シナリオ:年初来高値更新と「ご祝儀相場」

上値目安まで上昇場合は、12/2に付けた年初来高値を更新し、一段高い水準まで上昇します。

各移動平均線は、上昇する株価を追いかけるようになり、長期的だけでなく短期的でも明確な上昇トレンドを描くでしょう。

2914 JT 日足チャート|iTRADEスクリーニングより引用
2914 JT 日足チャート|iTRADEスクリーニングより引用

ただし、第3四半期決算発表以降の上昇時は、いったん上昇するともみ合いになり、再上昇するともみ合いが繰り返されています。

これを考慮すると、何がきっかけで再上昇するかです。現時点の材料は配当の「権利確定日」と「ご祝儀相場」です。

もし、権利確定日に向けて買いが集中すると、これがきっかけになり年内に再上昇もあるでしょう。そして、そのままご祝儀相場に乗って上昇が加速し、数日後に再びもみ合いになると予測します。

反対に、年末の権利確定日に向けた再上昇が発生しなくても、年明けのご祝儀相場に再上昇が起きることも予測できます。

つまり、同社はこの年末年始に材料がそろっているので、どちらかのタイミングで上昇すると予測します。

下落シナリオ:25日線・75日線までの調整

下値目安に到達した場合は、25日移動平均線のすぐ下まで下落します。これまでは、25日移動平均線が抵抗線になり、わずかに下抜けしても反発してきました。

2914 JT 日足チャート|iTRADEスクリーニングより引用
2914 JT 日足チャート|iTRADEスクリーニングより引用

今回も、25日移動平均線を大きく下抜けするわけではなく、わずかに下抜けする程度ですので、反発が期待できるでしょう。

一方で、万が一を考えると、平均下落率ではなく、最大下落率まで下落した場合です。この場合は、25日移動平均線を下抜けし、75日移動平均線の手前あたりまで下落します。

この1年間は、仮に75日移動平均線を下抜けしても、そのまま下落方向に勢いがつくことはなく、一時的な下抜けにとどまっています。

また、この下落により、一般的に下落トレンドの入口と言われるデッドクロスが起きる状況には至りません。

以上をふまえると、もし下落しても悲観的な下落ではなく、再上昇の期待を持てる下落になると判断します。

まとめ:さらなる上昇の条件は整っている

直近の動向を見る限り、同社の株価は好調であることが分かりました。今は、上昇が停滞し、もみ合いになっていますが、内訳を見ると再上昇を期待できる動きだと分析します。

こうなると気になるのが、ここから更に上昇し再び年初来高値を更新するには、何が必要かという点でしょう。決算発表を受け、上昇していることをふまえると、銘柄そのもののに勢いがあると判断します。

また、この年末のタイミングは、12月自体に上昇傾向があり、年末には配当の権利確定日、年明けにご祝儀相場を控えています。

このように、今はもみ合いをしているものの銘柄自体に勢いがあり、12月末にかけて上昇しやすい日本株市場の傾向、配当の権利確定日、ご祝儀相場の外部環境も整っています。

しかも、このもみ合いはボックス圏です。ボックス圏は長ければ長いほど、上下に抜けるときに大きく抜ける傾向があります。

もし、年末の権利確定日に向けもみ合いを抜けた場合は、上記の上値目安6,429円を目安にすると良いと考えます。

また、ご祝儀相場でもみ合いを抜ける場合は、ボックス圏の期間が長くなりますので、10~15%の上昇を想定しても良いでしょう。

ただし、このシナリオは楽観的なものです。悲観的には75日移動平均線の前まで下落することもないとは言えません。上昇の期待はしつつ、下落時もあることを念頭に置いておきましょう。

ぜひ、このような情報をもとに、あなたの投資スタンスを決めてみてはいかがでしょうか。

最後に:プロだけが持つ「ルール」の重要性

本記事の分析結果は、あくまで過去の統計データに基づいた「傾向」であり、未来を保証するものではありません。

しかし、多くの個人投資家は、このような客観的なデータや、売買の「明確なルール」を持たずにトレードに挑んでいます。

感情やニュースに流されることなく、再現性のあるルールで安定的な利益を狙うには、「株価のアルゴリズム」を学ぶことが不可欠です

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参考情報|こちらも併せて投資スタンスのご判断にご活用ください
ー 直近の日本株市場の動向はこちら

※本記事は2025/12/24時点の株式市場の状況をもとに執筆しました。年初来高値などの更新日や移動平均などの記載については、誤差が生じる場合がございます。予めご了承くださいませ。

最終的な投資判断について】

当記事は、特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、情報提供を目的としています。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。当記事によって生じた損害等について、当社は一切の責任を負いかねます。