執筆者:高橋 佑輔|株式会社SAC Technologies ストラテジスト|プロフィール詳細
(【システム戦略専門家】トレード歴12年・11年利益達成。某証券会社の運用の根幹となるルール策定経験に基づき、個人投資家が陥る危険な心理と対策を解説します。)
4755 楽天グループが、11/13に第3四半期決算発表を迎えます。2025年は2/14に年初来高値更新も、8月上旬まで低迷が続きました。そこから再び上昇し、直近では高値更新を射程圏に推移しています。
一時は「なぜ株価が安いのか?」と疑問が出る動きをしていましたが、直近は上昇していることもあり、「今、買うべきか?」悩ましいところかもしれません。
そこで今回は、4755 楽天グループが今後どうなるかについて、過去のデータ分析に基づき、今後の株価動向を徹底的に考えていきたいと思います。
4755 楽天グループの直近の株価動向:高値更新と移動平均線の分析
2月の高値更新以降は低迷したものの、8月下旬に75日移動平均線を25日移動平均線が上抜け(ゴールデンクロス)し、順調に上昇しました。また、200日移動平均線も、直近は右肩下がりから緩やかな右肩上がりに転換しています。
そして、9月には一時1000円台を回復し、10月下旬からは1000円台を維持し高値更新も射程圏の水準まで上昇しています。
ただし、25日移動平均線が角度をつけて上昇し、直近は横ばい状態になっていることから、もう一段の上昇が難しく、上値が重たい状況が続いています。
このまま再上昇し高値更新するのか、それともここで停滞してしまうのか判断が難しいところでしょう。

そこで第3四半期決算発表後の11月下旬の上値・下値の予想レンジを計算し、同社の株価がこれからどうなるのか、今後の動きを予測してみましょう。
【過去25年データ分析】決算発表後の株価変動の「統計的傾向」
まず同社の株価が、決算を挟んだ1ヶ月間(11月初旬~11月下旬)で、例年どのような傾向が見られるのか分析してみます。そのデータ分析の結果はこちらです。

| 期間 (2000年~2024年) | 上昇回数 | 下落回数 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 全体の傾向 | 13回 | 12回 | 上昇・下落の傾向はほぼ均衡 |
| ±10%以上の変動 | 4回 (最大+25%超) | 3回 (最大-20%程度) | 10%を超えると勢いよく変動する傾向 |
| ±5%以内の小幅変動 | 4回 | 4回 | 上下合わせて8回。全体のおおよそ1/3を占める |
このデータ分析の結果、決算を挟んだ1ヶ月間の株価は、上昇傾向と下落傾向が「ほぼ均衡している」と読み取れます。変動幅を見ると、大幅変動・中程度変動・小幅変動もほぼ均等の回数です。
これをふまえると、この時期の株価は上下のどちらに進むか、変動幅がどれくらいになるかは、そのときになってみないと分からないという難しい傾向が見られます。
データ分析が示す株価変動の傾向:高値更新目前での「もみ合い」予測
唯一明確なのは、10%を超えるときは、勢いよく方向感が出る傾向があることです。それ以外は均等なので、常に中立のスタンスで株価変動を見ていないと対応が難しいと判断します。
なお、直近の動向をふまえると、高値更新を射程圏に推移していますが、小幅変動になる可能性が高いと分析します。
もし、ここから5~10%、10以上上昇するには、何か大きな材料がないと難しいと私は考えます。もし、好決算が発表されても、決算内容と株価には連動性がほとんどないとデータ分析から出ています。
そうなると、例えば懸念材料であるモバイル事業の決算に良いサプライズがあるなど、そういった強い材料がないと、伸び悩むと考えます。
では、この分析結果を元にすると、同社の11月下旬の株価予想レンジはどれくらいになるのでしょうか?
データ分析に基づく11月下旬の目標株価「予想レンジ」
これまでの株価をデータ分析すると、11月下旬の株価は、平均的な上昇幅は約10.8%、平均的な下落幅は約8.2%と考えられます。よって、11月下旬の株価の予想レンジは以下の通りです。
【予測レンジ(目標株価)】
上値目安:1,118.5円
下値目安:926.5円
※10/31終値1009.5円を基準に計算
また、下のグラフの通り、上昇幅は約10.8%、下落幅は約8.2%ということもあり、やや上値のほうが大きく変動しますが、上下ともに同じくらいの変動があると予想されます。

予想レンジでは上下とも5~10%の変動になっていますが、変動幅に傾向がないことを前提に確率で考えると、これは目安に過ぎません。
10%に到達すると、そのまま方向感が出て、より大きく変動すると分析します。反対に、それ以下の場合は、変動が小さい動きをすると判断します。
このように、変動幅に傾向がありませんので、この予想レンジは平均的な目安として捉えておきましょう。
RSIと予想レンジから見る現状:高値圏のテクニカル分析
上値目安まで上昇した場合は、現在のもみ合いの状態から抜けり年初来高値を更新します。そうなると、さらに上昇を期待したいところですが、ここは控えめにみたほうが良いと判断します。
上昇時は10%を超えると、そのまま上昇する傾向が見られます。しかし、直近のRSIを見ると、70%目前まできています。この点も考慮すると、高値更新で利益確定に押されることが予想されます。

そうなると、引き続き11月下旬までは上値が重たい展開になると分析します。もし、上昇するとしたら12月に入り、日本株全体が上昇傾向に入るタイミングと考えるのが良いでしょう。
現状から見る注意すべき「下落リスク」と最悪のシナリオ
反対に、下値目安まで下落した場合は、25日移動平均線を一気に下抜けし、その下にある75日移動平均線付近に到達します。高値圏に上昇する前の水準である8月頃に戻ります。
10%を超える下落ではありませんが、高値圏を推移していた状態から一転します。これまでの上昇が止まり、方向感の出るまま更に下落する可能性もあります。
その場合、75日移動平均線も下抜けしますので、200日移動平均線が抵抗線として機能するかがポイントです。

なお、2025年2月~8月の期間は、抵抗線として機能していませんでした。そのようなこともありますので、もし75日移動平均線を下抜けした場合は、株価の推移を慎重にみていきましょう。
今後上昇の条件:外部環境とファンダメンタルズの重要性
直近は高値圏を推移し、高値更新を射程圏にしている同社ですが、改めて今後の株価の予測を整理しましょう。
これまでの分析を見る限り、今は天井だと判断します。年初来高値を更新すると、さらに上昇の可能性がありますが、直近の過熱感を見ると、利益確定の売りに押されもみ合いになると予測します。
この時期の同社の株価は、決まった傾向がないので予測に反することもありますが、厳しめに見ておくほうが良いと考えます。
今後の株価上昇の条件
現状を見る限り、データやテクニカル分析では、さらなる上昇が難しい状況です。そうなると、移動平均線を上抜けなどのテクニカル的な部分ではなく、ファンダメンタルズの材料が出てこない限り、上昇は難しいと考えます。
具体的には、決算発表での良いサプライズなどです。懸案事項のモバイル事業が営業利益で黒字転換など、そういった材料が発生してときです。
ただし、今の時点でそういった報道がないことを考えると、投資家たちはここが天井と判断し、利益確定に入ってしまうかもしれません。
そうなると、株価上昇を後押しするのは、日本株全体の傾向です。日本株は12月に上昇しやすい傾向があります。その全体の波に乗って、上昇するのが一つ要因だと考えます。
ただし、それは自力で上昇するのではなく、外部の風が送り込まれて波に乗るイメージです。そのようなこともありますので、基本的には厳しめのスタンスで見て、外部の風の状況によって高値更新から更に上昇があると考えると良いでしょう。
ぜひ、このような情報をもとに、あなたの投資スタンスを決めてみてはいかがでしょうか。
最後に:プロだけが持つ「ルール」の重要性
本記事の分析結果は、あくまで過去の統計データに基づいた「傾向」であり、未来を保証するものではありません。
しかし、多くの個人投資家は、このような客観的なデータや、売買の「明確なルール」を持たずにトレードに挑んでいます。
感情やニュースに流されることなく、再現性のあるルールで安定的な利益を狙うには、「株価のアルゴリズム」を学ぶことが不可欠です。
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参考情報|こちらも併せて投資スタンスのご判断にご活用ください
ー 直近の日本株市場の動向はこちら
※本記事は2025/11/7時点の株式市場の状況をもとに執筆しました。年初来高値などの更新日や移動平均などの記載については、誤差が生じる場合がございます。予めご了承くださいませ。


