日経平均株価 が連休前後に小幅ながらも7日続伸・4日続伸し、3万8000円台まで回復しました。
これで完全に暴落前水準を上抜けし、3月下旬頃の水準まで回復です。
ただし、上昇には勢いが不足し小幅上昇が続いたことで、結果的に3万8000円台に届いたという印象も受けます。
また、もう一つ見落とせないのが株式市場がセオリー通りの動きに戻ったかという視点です。
あの暴落から少しずつ戻りつつありましたが、実は今週の動きを見る限り”そうとはいえない”状況だと読み取れます。
そのようなこともあり投資家目線では、日経平均株価が3月中旬頃の水準まで回復したと言っても、あまりポジティブに受け止められない状況かもしれません。
実際、3万8000円回復から上値は重たく、再び方向感がなくなりそうな動きを見せています。
はたして、来週の日本株市場や日経平均株価は、どのように推移することが予想されるのでしょうか。
そこで今回も「株トレンド指数」や連休前の動向をもとに、今週の株式市場の動向や、今後の動向について考えていきましょう。
今週の市場動向と日経平均株価の変動
こちらをご覧ください。こちらは4/28〜5/14の日経平均株価と株トレンド指数の状況です。

株トレンド指数は、以下のような4つの指数で構成されています。
・天井指数…「170」付近で、相場全体の上昇トレンドが終焉する傾向
・底値指数…「220~420」付近で、相場全体が底値に近づき適正株価まで回復傾向
・押し目買い指数…30に近い水準になると押し目買い戦略が機能しやすい傾向
・空売り指数…「50」付近で、相場全体の上昇にブレーキが掛かる傾向
3日間のデータですので参考情報にはなりますが、今週の株式市場は、連休前と同様日経平均株価と株式市場全体が”あまり連動していない週”でした。
株トレンド指数から見る日本株市場の特長
ひとことで言えば、日経平均株価の続伸や3万8000円台回復といった響きほど株式市場全体は上昇に向かって動いていないということです。
この異変は日経平均株価の一度目の続伸である連休前から起きていました。その異変とは「空売り指数優位」の株式市場であったことです。
二度目の続伸である連休後から今週にかけて、その状況は加速しました。5/12以降の3日間は空売り指数の水準が上がり、上昇傾向を示す天井指数を大きく上回りました。
通常「空売り指数>天井指数」の関係が起きると、株式市場全体は日経平均株価の動きに関係なく突発的な上昇を見せる傾向があります。
しかし、今週は空売り指数の水準が高すぎます。ここまでの水準に到達するのは直近2年でも見られません。
近い水準でも昨年8月下旬に到達した52です。それを5/12〜5/14の3日間とも上回っています。
つまり、これは株式市場全体がセオリーでは考えられない範囲での動きになっていると考えられます。
一方で、下落傾向を示す底値指数の水準は大きくても3にとどまっていることから、株式市場全体に下落の要素がないことも分かります。
このように連休前後の株式市場全体は、日経平均株価が続伸を見せる裏側でセオリーとは違う動きを見せていました。
総合すると、「日経平均株価の上昇の通り下落の心配はないが、上がり過ぎの可能性がある」というのが今週を含めた連休明けの株式市場と言えます。
そこで、改めて「日経平均株価と株式市場全体の動きを比較」しながら、各日の詳細も見ていきましょう。
日経平均株価と株式市場全体の動きを比較
週初め5/12は日経平均株価は0.38%上昇と前日とほぼ変わらない動きをしました。株トレンド指数は前日の動きから変化し空売り指数優位になりました。
ただし、この時点ではまだ異変とは言えない状況でした。なぜなら、前日の天井指数が高く、その流れで一時的に空売り指数が上昇することがあるからです。
5/13になると株式市場全体は異変に変化しました。日経平均株価は1.43%上昇しましたが、空売り指数の水準が昨年8月下旬の最も高かった水準よりも上昇しました。
5/14は日経平均株価が0.14%下落を見せ、株トレンド指数では空売り指数が前日に近い水準を維持しました。
あくまでも結果論にはなってしまいますが、続伸で好調に見えた日経平均株価ですが、5/13がブレーキを掛ける一撃になったと考えられます。
また、連休前までの動きであれば突発的な上昇が期待できましたが、連休後は日経平均株価は上昇していますが「全体的に上がり過ぎ」というメッセージを株トレンド指数が送っていたと読み取れます。
実際に、ほぼ水平状態ではありますが、日経平均株価は5/14、5/15前場と流れを押さえつけられている印象です。
下落幅は小さいですが、5/14に0.14%下落、5/15前場時点で1.11%下落とブレーキをかけられています。
加えて、空売り指数がここまで上昇したのは「株式市場が上がり過ぎ」を意味するので、日経平均株価も勢いよく上昇をつけたのではなく、上値が重たい中でジリジリと上昇しました。
今週の市場動向と日経平均株価の変動のポイント
このように連休明けも含めて今週の株式市場は、結果的に3万8000円にたどり着いた日経平均株価の推移ほど楽観的な状況ではないことが分かります。
あくまでも、上値が重たい中で日経平均株価だけがなんとか上昇したとも言えます。
そして、何よりも注意したいのが、空売り指数の水準が直近2年でない水準まで上昇したことです。
過去に付近の水準まで上昇したときの日経平均株価の推移を見ると、そこから方向感なくボックス圏を推移しています。
その点もふまえると、あの暴落から3万8000円台に回復したのは嬉しいですが、ここからしばらく調整局面に入るか、方向感を失う展開になるかもしれません。
日経平均株価の動向を徹底分析する
日経平均株価を基準に見ると、暴落前水準回復からさらに上昇し3月下旬頃の水準まで回復しています。
これを見る限り少々時間が掛かったようにも見えますが、理想的な回復を見せています。
また、この上昇により暴落前のボックス圏の目安であった「上値:3万9000円付近・下値:37,000円前後」に、そろそろ戻ったと考えても良いでしょう。
ただし、今週の株式市場は「上がり過ぎ」の可能性がありますので、まだ完全回復とは判断しないほうが良いでしょう。
一方、株トレンド指数を見ると、日経平均株価の上昇ほど天井指数の水準が上がっていないことが分かります。
その水準は低く3月中旬程度です。この点をふまえても、やはり日経平均株価の結果的な上昇ほど株式市場全体は上昇していないことが分かります。
加えて空売り指数の水準は、直近2年でも到達していない水準ということもあり、この2ヶ月間でも突出しています。
ポジティブに捉えれえば、この2ヶ月間の中では暴落時以外では動きがあった週ですが、ネガティブに言えば、これが株式市場全体の勢いを押さえつけていると考えられます。
このように日経平均株価と株トレンド指数を見ると、今週に限っては連動性がありませんが、見方によっては日経平均株価が株トレンド指数の動きを後追いしているとも読み取れます。
来週の日経平均株価の予想シナリオ
そういった点をふまえると、日経平均株価に限っては「上値:3万9000円付近・下値:37,000円前後」よりもやや下の水準でボックス圏を想定しておくと良いでしょう。
そして、株式市場全体は、空売り指数が異常に高いと言ってもよい状況ですので、まだセオリー通りに戻っていないと考えておくのが良いでしょう。
むしろ、ここから上値が重たく押し戻される可能性も読み取れるので、日経平均株価で言えば、ボックス圏の上値を狙う動きではなく「下値〜中心」を動く展開になるかもしれません。
国内外投資家の売買動向から見た来週の見通し
日本株市場の根底部分として注目すべき指標である投資主体別売買動向から株式市場全体の需給バランスも見ておきましょう。タイムラグがあるデータではありますが、現状は以下の通りです。
・外国人投資家:買い越し → 買い越し強まる(↗)
・個人投資家:売り越し → 売り越しが弱まる(↗)
・日本の機関投資家:売り越し → 買い越しに変化(↗)

三者をまとめると、全体の需給バランスは以下のグラフのように「買い優勢」です。
ただし、その多くのバランスを担っているのは外国人投資家です。日本の機関投資家や個人投資家は動きが活発ではありません。
タイムラグがあるデータということもあり、ここは連休があったことが原因かもしれません。
個人投資家の売買動向
とはいえ、一つ気がかりなこともあります。それは私たち個人投資家だけが「売りポジション」を取っていることです。
これまで国内外の機関投資家は同じポジションをとり、個人投資家だけが違うポジションをとることは何度かありました。
そして、こういったときのあとは株式市場に変化があることが多くありました。タイムラグがあることと、この点をふまえると、連休明けの日経平均株価の上昇はここが関係していたのかもしれません。
外国人投資家の売買動向
また、違う視点で見ると、今の日本株市場は国内の投資家ではなく外国人投資家によって動かされているとも言えます。
国内の機関投資家と私たち個人投資家を合算しても外国人投資家には全く届きません。
その点を考慮すると、連休明けの日経平均株価の上昇は米国の完全問題が外国人投資家にとって「最悪の結果には向かわない」など、当初の突拍子もない話から緩和される方向性が見え、積極的に動き出せるようになったとも予測できます。
国内外投資家の売買動向から見た来週の見通し
もしこれが正しいなら、これまで消極的になっていましたが、急に買い戻しをするなど動き始めているのかもしれません。
そして、その買い戻しが日経平均株価の上昇につながった可能性も考えられます。しかし、それは上昇トレンドが発生するような本来の上昇ではなく買い戻しによる上昇です。
だから、株トレンド指数はいち早く日経平均株価が結果的に上昇しているものの「上がり過ぎ」と空売り指数で知らせてくれた可能性があります。
ちなみに、これは完全にデータ分析したわけではないので可能性の話になってしまいますが、株トレンド指数と投資主体別売買動向は比較的連動しています。
投資主体別売買動向の詳細が株トレンド指数というイメージで連動が見られます。それも考慮すると、外国人投資家の買い戻しが日経平均株価の上昇につながるが、それは本来の上昇ではないので上がり過ぎというのも説明がつくでしょう。
なお、これは前回読み取った内容です。
”予測ではありますが、このように三者の動きを考慮すると、今週の株式市場のように日経平均株価は個人投資家の思惑で小幅上昇し、株式市場全体は上がり過ぎになっていることとの整合性もとれます。”
結果論のような話になりますが、今週の状況もふまえると今の株式市場は上がり過ぎの可能性が高いので、ここから調整に入るシナリオが想定されるでしょう。
来週の日経平均株価見通し:ワンポイントアドバイス
このように今週の株式市場は連休前後の状況もふまえると日経平均株価が3万8000円台を回復したという響きほど好調ではないことが分かります。
株トレンド指数や需給バランスで見ると、上値は重たく上昇が続くような動きをしていないことから日経平均株価は「上値:3万9000円付近・下値:37,000円前後」もしくは、そこからやや下の水準のボックス圏に入ることが予測されます。
加えて、まだ米国大統領次第で株式市場が変化する要因は残っています。実際、今週の株式市場は「上がり過ぎ」と読み取れるもののセオリー通りの動きではありません。
そういった状況をふまえると、来週は積極的に動くのではなく、まずはこの上がり過ぎになっている日本株市場がどこまで調整されるかを見極める必要があるでしょう。
そして、その調整がそこから上昇に向かう調整なのか、それとも下落に向かう調整なのかを見極める必要があります。
ただし、日経平均株価の推移だけでは、この調整局面の裏側で何が起きているかを読みとることはなかなか難しいでしょう。
もしそれを読み取るなら、例えば上のグラフにはないOVER指数やRISK指数も見ることで、どちらの方向に向かう調整なのかを読み取るのに効果的です。
米国大統領の影響でセオリー通りに動かないときもありますが、ここから調整局面に入ったら、次の展開を読むことは必須になります。
来週はそのカギになる週になると想定されますので、ぜひそういった視点で株式市場を見ていきましょう。
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▼ご注意▼
※1.こちらの分析結果はあくまでも日本株市場全体の傾向をもとにした内容です。個別株の動向と必ずしも一致するわけではありません。あくまでも市場全体の動向として、ご参考くださいませ。
※2.本記事は本記事は2025/5/14(水)時点の株式市場の状況をもとに執筆しました(日経平均株価のみ5/15前場時点のデータを含みます)。予めご了承くださいませ。