執筆者: 秋山大介|データ・アナリスト| プロフィール詳細
(独自の「株トレンド指数」を開発・運用。需給バランスに基づく分析で定評あり。)
日経平均株価 は、11/5に一時4万9073円まで下落しつつも、終値では5万212円と引き続き5万円の高値圏で推移しました。
しかし、今週は約4.2%(約2200円)続落し、高値圏での「停滞(ボックス圏)」の様相が強まっています。
参考データではありますが、過熱感を見るテクニカル指標RSIで日経平均株価を見ると、過熱感がおさまり中立に近い水準まできています。
一時的な5万円割れやテクニカル指標の動きを見る限り、市場の熱気は収まり、いったんニュートラルな状態に近づいたと分析できます。
そこで今回も相場の動きを数値で見える化した「株トレンド指数」や先週の動向をもとに、今週の市場動向と来週の予想レンジを徹底分析します。
【独自の株トレンド指数】 日経平均株価 と市場全体の乖離を徹底検証
こちらをご覧ください。こちらは10/23〜11/6の日経平均株価と株トレンド指数の状況です(株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら)。

株トレンド指数は、以下のような4つの指数で構成されています。
・天井指数…「170」付近で、相場全体の上昇トレンドが終焉する傾向
・底値指数…「220~420」付近で、相場全体が底値に近づき適正株価まで回復傾向
・押し目買い指数…30に近い水準になると押し目買い戦略が機能しやすい傾向
・空売り指数…「50」付近で、相場全体の上昇にブレーキが掛かる傾向
>>株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら
株トレンド指数から見る今週の日本株市場の特長
今週の株式市場は、営業日が少ないので参考データではありますが、日経平均株価と株式市場全体が”やや連動している週”でした。
そのような状況でしたので、日経平均株価だけを基準に相場分析する人と、私たちのように株トレンド指数も使って相場分析する人では、それほど差異がなかったかもしれません。
ただ、今週の日経平均株価は、方向感を捉えるのが難しい週だったことをふまえると、日経平均株価だけを基準に相場分析する人にとっては、とても難しい週だったでしょう。
象徴的だったのが、一時4万9073円まで下落した11/5です。場中に5万円を割り、そのまま下落しそうな動きを見せていましたが、終値では5万円を回復しました。
先週までは緩やかに上昇を続けてきたこともあり、場中ではありますが、少々気がかりな動きでした。
そういった動きをふまえると、「掴みどころのない相場」というのが、今週の日本株市場にあった表現かもしれません。
「円単位の変動」に潜む錯覚:変動率で実態を捉える重要性
では、詳細を見てみましょう。週初め11/4の日経平均株価は1.74%下落しました。円単位では914円下落です。
この水準まできていますので、引き続き円単位で見ると大きく下落したように見えますが、変動率は約1.7%です。よって、通常の下落幅と考えるのが妥当です。
しかし、メディアでは変動率ではなく「円単位」で報道されることが多いので、大きく下落した印象を受けかねない状況です。
引き続き、円単位で錯覚を起こさないように、変動率で状況をつかんでいきましょう。
同日の株トレンド指数は、小さな上昇傾向だと分析します。先週末をピークに小さな上昇が発生し、その余波が同日だったと読み取れます。
ただし、株式市場を牽引するような上昇ではなかったこともあり、日経平均株価は下落し、株式市場全体は小さく上昇と動きに違いのある日でした。
11/5の日経平均株価は2.5%下落しました。円単位では1284円下落です。もし円単位で状況把握をしている人がいたら、とても大きな下落と感じたでしょう。
前日と合わせると約2200円の下落です。中には暴落と捉えてしまう人もいるかもしれません。
変動率では約4.2%下落ですので、それなりの下落ではありますが、まだ許容範囲の下落と読み取れます。
ただ、円単位で錯覚してしまうか、それとも変動率で現実的に状況を捉えるかで、受け止める状況は変わります。
そのような意味では、同じ日経平均株価だけを基準に相場分析する人でも、差異があった日だと考えます。
一方、株トレンド指数は日経平均株価の下落に連動するように、上昇傾向を示す天井指数の水準が下がりました。
前日までは小さいとは言え、上昇が発生していましたが、同日の水準はほぼ無風状態に近い中での発生です。
ですが、ここで一つ重要なことがあります。同日の押し目買い指数が16まで上昇しました。前日も10まで上昇していますが、更に水準を上げています。
この点を考慮すると、日経平均株価は下落していますが、これは一時的な下落で、株式市場全体が再上昇を狙っている動きだと分析できます。
11/6の日経平均株価は再上昇し、1.34%上昇しました。円単位では671円上昇です。前日までの下落から見て半値戻しにも到達していませんが、続落が止まりました。
株トレンド指数を見ると、上昇傾向を示す天井指数の水準が前日より上がっています。11/4の水準に戻りました。
株式市場を牽引するような上昇ではありませんが、小さく上昇していると分析します。
今週の市場総括:5万円維持もボックス圏推移と判断
このように今週の株式市場は、日経平均株価を株トレンド指数が、やや連動している状態でした。
ただし、どちらの指数も上下していたので、日本株市場が上下のどちらに進もうとしているかを掴むことが難しい状況でした。
この状況をふまえると、日経平均は引き続き「ボックス圏を推移」していることが分かります。
日経平均の続落で一気に下落したように見えましたが、実際にはそれほど下落せず、再上昇しています。
株トレンド指数も全く同じ動きではありませんが、上昇の度合いの強弱があり、完全にどちらの方向へ進もうとしているかまでは判断できません。
日経平均5万円の高値圏を推移していますが、依然として方向感の定まらないボックス圏を推移していると私は判断します。
よって、今後再上昇や、下落があったとしても、それもボックス圏の範囲で動きだと分析します。
来週(11月第2週)の市場予測: 日経平均株価 の予想レンジとシナリオ
日経平均株価を基準に見ると、緩やかに上昇はしていますが、引き続きボックス圏を推移していると分析します。
超長期的に見れば上昇トレンドのように見えます。しかし、実際はボックス圏の水準が段階的に上がっただけの状態だと判断します。
加えて、前述の通り日経平均株価は、この水準までくると同じ変動率でも円単位の変動が大きくなることも理由として挙げられます。
もし、これが上昇トレンドであれば、例えば二次曲線のようにもっと急カーブの上昇になると考えます。
しかし、それが緩やかな上昇であるということは、日経平均株価の水準上昇ほどは実際に上昇していないと判断できます。
よって、引き続き日経平均株価はボックス圏を推移していると私は分析します。
なお、なお、直近の高値圏をふまえた上で、ボックス圏の範囲は、引き続き「上値:4万9000円~下値:4万4000円」で見ていくのが良いと判断します(この水準をベースレンジとし、現状の5万円台は「上振れの範囲」として捉えます)。
ただし、変動率に対しての円の動きが大きくなっているので、上値は「2000円程度の上振れ」を想定することをオススメします。
一方、株トレンド指数を見ると、今週は小さな上昇があっただけで、それほど株式市場が動いていないと判断します。
また、今の時点での判断は難しいですが、引き続き株式市場全体は、上昇の準備をしているように見受けられます。
しかし、今の上昇が小さい水準なので、いつ均衡状態に戻ってもおかしくない状況でもあります。
そういったことをふまえると、過度に上昇を期待するのではなく、中立よりは上昇の可能性が高いという程度で考えておくのが良いでしょう。
やはり、株トレンド指数を見ても、ボックス圏を推移していることが分かります。
来週の日経平均株価の予想シナリオとレンジ
このように今週の株式市場は、日経平均株価と株トレンド指数の両指数を見ての通り、引き続きボックス圏を推移していると分析します。
ただし、先週までとやや状況が違う部分もあります。先週は上昇の準備をし、ボックス圏の上値を推移するような状況でした。
しかし、今週はボックス圏の中心に進みかける動きをしていました。
その動きをふまえると、株式市場はいったん均衡状態になる可能性があります。よって、来週の日経平均株価は、引き続きこのような範囲を推移すると分析します。
▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:4万9000円~下値:4万4000円
なお、この水準までくると、変動率に対する円単位の変化が大きくなるので、誤差が出ることは必須です。
誤差が出た場合の上値も同様に、+2000円の「5万1000円」程度で見ておくと良いと判断します。
また、ここからは注意点があります。それは上記でも解説した通り、円単位での変動幅が大きくなることです。
変動率で見ると、そこまで到達していない場合でも、円単位の変動幅の大きさを見て、大きく下落したと錯覚する可能性があります。
しかし、実際は上記のようなボックス圏なので、下値を割らない限り再上昇が見込める水準です。
そういった変動の大きさが出てくるのが、ここからの動きですので、この点には注意していきましょう。。
投資主体別売買動向:需給バランスと今後の市場影響
補足としての日本株市場の根底部分である株式市場全体の最新の需給バランスも見ておきましょう。今週は営業日が少なく、データ更新がないので先週と同じ内容です。
・外国人投資家:小さく買い越し → 買い越しに変化(↗)
・個人投資家:買い越し → 売り越しに転換(↘)
・日本の機関投資家:売り越し → 売り越しやや拡大(↘)

三者をまとめると、全体の需給バランスは「ほぼ均衡」です。タイムラグがあるデータですが、この状況を前提にすると、今週の株式市場の動きが理解できます。
この均衡が続いていれば、今週の株式市場のようにボックス圏が続いていると予測できます。
また、続落についても、一時的にバランスが崩れれば、ある程度下落します。しかし、それがまた戻れば上昇します。
予測ではありますが、この均衡状態が続いたことで、今週の株式市場もボックス圏が続き、よりニュートラルに近い状態になったのかもしれません。
では、改めて各投資家の詳細を見てみましょう。
外国人投資家の動きとその示唆
外国人投資家は、買い越しを拡大しました。予測ではありますが、直近の動向をふまえると、買い越しの水準を下げたか、中立に近い状態になっているかもしれません。
もし、そのような動きがあると、週初めの続落のようなことが起きてもおかしくありません。
予測ではありますが、外国人投資家が買う材料が大きく出ていないこともふまえると、こういった状況が想定されます。
個人投資家の傾向と注意点
次は、私たち個人投資家です。買い越しから売り越しに転換しました。予測ではありますが、今週の株式市場では、売り越しが小さくなったのではないかと考えます。
先週末に日経平均株価が5万2000円台に到達しました。個人投資家は日経平均を基準に売買の判断をする傾向があります。
それをふまえると、5万2000円の響きで利益確定し、売り越しが優勢になったのではないかと考えます。
ただし、5万2000円になったのが1日だけですので、個人投資家全体が売り越したというよりは、一部の個人投資家が売り越したのではないかと考えます。
よって、個人投資家は売り越しが拡大したのではなく、小さくなったのではないかと予測します。
日本の機関投資家の今後
最後に日本の機関投資家です。売り越しが拡大しています。最も読みにくい動きをするのが日本の機関投資家ということもあり、予測が難しいです。
ですが、今の株式市場を取り巻く材料を考えると、積極的に動く材料がないので、引き続き小さくポジションを取っていると考えます。
国内外投資家の売買動向から見た来週の見通し
以上が三者の状況です。予測ではありますが、このようなことが想定されます。まとめると上のデータよりも、三者のポジションが小さくなっていると予測されます。
そして、多少のバランスの崩れがあり、今週のように続落から上昇するような掴みどころのない動きをしていると分析します。
その背景には、やはりボックス圏があり、需給バランスから見ても、上値を狙いに行くボックス圏ではなく、ニュートラルポジションに近い状態でボックス圏を推移すると判断します。
まとめ:ボックス圏での「円単位の錯覚」と投資家への最終アドバイス
このように今週の株式市場は、一言でいえば「ボックス圏の中心を推移する掴みどころのない状態」です。
しかも、予測される需給バランスが均衡状態なので、先週よりも株価が動きにくい状況です。
また、先週時点ではボックス圏を上抜けするような動きが見られましたが、やはり上振れの範囲でした。そのようなこともあり改めて、来週の日経平均株価の範囲を整理すると、こうなります。
▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:4万9000円~下値:4万4000円
ただし、上振れを考慮し、上値は5万1000円程度まで上昇があると分析します。
繰り返しになりますが、この水準になると円単位での変動が大きくなります。変動率で見るとボックス圏を推移しているが、円単位では上昇しているように見えることが多発します。
先週はそれが上振れでしたが、来週はボックス圏の中心に向かう下落や、下値付近に向かう下落も想定されます。
そうなると、円単位では暴落や急落のような下落もあるかもしれません。しかし、それは錯覚で、変動率で見るとそこまでいかないのが実際でしょう。
今度は下落時にそういった錯覚を起こさないように、円単位ではなく変動率で見つつ、株トレンド指数を含めて複合的に動向を追いかけていきましょう。
この記事は、独自の株トレンド指数を用いた分析レポートの一部です。すべての予測実績検証は過去の分析レポート一覧からご覧いただけます。
▼ご注意▼
※1.こちらの分析結果はあくまでも日本株市場全体の傾向をもとにした内容です。個別株の動向と必ずしも一致するわけではありません。あくまでも市場全体の動向として、ご参考くださいませ。
※2.本記事は2025/11/6(木)時点の株式市場の状況をもとに執筆しました。データや分析内容については、誤差が生じる場合がございます。予めご了承くださいませ。


