執筆者: 秋山大介|データ・アナリスト| プロフィール詳細
(独自の「株トレンド指数」を開発・運用。需給バランスに基づく分析で定評あり。)
日経平均株価 が膠着状態です。
5万円の高値圏を維持していますが、週初め11/10の1.26%上昇を除いては、1%未満の変動が続いています。
参考データではありますが、過熱感を見るテクニカル指標RSIで日経平均株価を見ると、再び上がり、過熱感が高まっています。
日経平均株価が高値圏を推移しているとはいえ、RSIの状況や変動率を見ると、ニュートラルというよりも、膠着に近づいているのかもしれません。
そこで今回も相場の動きを数値で見える化した「株トレンド指数」や先週の動向をもとに、今週の市場動向と来週の予想レンジを徹底分析します。
【独自分析:株トレンド指数】日経平均の「膠着」と市場全体の「上昇準備」の乖離を徹底検証
こちらをご覧ください。こちらは10/30〜11/13の日経平均株価と株トレンド指数の状況です(株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら)。

株トレンド指数は、以下のような4つの指数で構成されています。
・天井指数…「170」付近で、相場全体の上昇トレンドが終焉する傾向
・底値指数…「220~420」付近で、相場全体が底値に近づき適正株価まで回復傾向
・押し目買い指数…30に近い水準になると押し目買い戦略が機能しやすい傾向
・空売り指数…「50」付近で、相場全体の上昇にブレーキが掛かる傾向
>>株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら
株トレンド指数から見る今週の日本株市場の特長
今週の株式市場は、日経平均株価と株式市場全体が”連動していない乖離した週”でした。
よって、日経平均株価だけを基準に方向感を捉えている人と、私たちのように株トレンド指数も使って方向感を捉えている人では”差異”が生じた週でした。
端的に言えば、日経平均株価だけを基準にしている人にとって、今週の株式市場は冒頭の通り「膠着状態」だったと判断できます。
一方、私たちのように株トレンド指数も使っている人にとっては「日本株市場が上昇に入りつつある」と分析できます。
「膠着状態」と「上昇に入りつつある」です。全く違う分析をしたのが、今週の株式市場でした。
ちなみに、私たちのように株トレンド指数を使って分析すると、60%の確率でダマシの可能性はありますが、上昇トレンドの入口とも分析できます。
これは、日経平均株価の推移だけでは読み取ることのできない分析結果です。
そのようなこともありますので、日経平均株価だけを見て相場を捉えている人にとって、今週はネガティブな週だったと言えるでしょう。
日経平均株価は膠着だが、株式市場全体は上昇中
では、詳細を見てみましょう。週初め11/10の日経平均株価は1.26%上昇しました。円単位では635円上昇です。
この水準まできていますので、引き続き円単位で見ると大きく下落したように見えますが、変動率は約1.2%です。よって、小幅上昇と捉えるのが妥当でしょう。
なお、前回もお伝えしている内容ですが、この水準までくると円単位の変動は実態を捉えることができなくなります。
水準としては円単位で捉えても良いですが、日々の変動幅は円単位ではなく、変動率で見ていきましょう。そうしないと錯覚を起こし、誤った判断につながります。
同日の株トレンド指数は、まだまだ余力はありますが、日経平均株価の変動率の大きさよりも、大きな上昇があったと分析できます。
上昇傾向を示す天井指数の水準が「51」まで上昇しました。この水準まで直近で上昇したのは10月下旬です。
このときは、ここをピークに天井指数の水準が下がりました。しかし、今回は、この水準がスタートになっています。
その点を考慮すると、日経平均株価の動きとは差異があり、株式市場全体が上昇の入口に迫ったとも判断できる日でした。
11/11の日経平均株価は-0.14%下落しました。円単位で68円下落です。この水準で考えると、この変動は誤差の範囲のようなものです。
日経平均株価だけで方向感を捉える人は、前日の下落から変動がないので、ネガティブに状況を捉えたかもしれません。
一方、株トレンド指数は、上昇傾向を示す天井指数の水準が38まで下がりました。
同時に、下落傾向を示す底値指数の水準が「11」まで上昇しました。底値指数が2桁になるのは、10月中旬以来です。
しかし、これは心配するようなことではなく、一時的なことだと判断します。
もしこのとき天井指数が発生していなければ状況が違いますが、同時に両者が発生していることをふまえると、過度な心配はいらない水準です。
11/12の日経平均株価は0.43%上昇しました。円単位では220円上昇です。また、このとき11/4以来5万1000円台を回復しました。
ただし、上昇幅が0.43%だったことをふめると、勢いのある上昇とは言えず、横ばい状態の中で偶然回復した動きだと分析します。
そして、同日の株トレンド指数は、上昇傾向を示す天井指数の水準が50まで上がりました。前日2桁まで上昇した底値指数の水準は下がりました。
両者の動きをふまえると、引き続き上昇傾向が続いていると判断します。よって、この日も日経平均株価だけを見るか、株トレンド指数も含めて見るかで、状況の把握に差異がありました。
11/13の日経平均株価は前日同様0.43%上昇しました。円単位では218円上昇です。この変動ですので、前日から横ばいと判断します。
株トレンド指数は、上昇傾向を示す天井指数の水準が上がり「78」まで上昇しました。まだ、上昇トレンドに入ったとは言えない水準ですが、入口にはきたと分析できる水準です。
同時に空売り指数の水準も上がっています。この動きもふまえると、今週は株式市場全体が順調に上昇していると分析します。
今週の市場総括:ボックス圏推移だが、これからトレンド発生が見込まれると判断
このように今週の株式市場は、日経平均株価を株トレンド指数が、やや似ている動きをした日もありますが、基本的には「連動していない週」でした。
しかも、一方は横ばいや膠着状態、一方はダマシの可能性はあるものの「上昇の入口」と分析しました。
このように今週の株式市場は、日経平均株価だけを見るか、それとも株トレンド指数も見るかで、株式市場全体の動きの捉え方が全く違っていたと考えます。
今の時点では、実際の利益に差異はそれほどないと思われます。しかし、もしダマシでなく、上昇することがあると、ここは両者の分岐点になると想定されます。
ただし、まだ本格的な上昇トレンドに入ったわけではないので、全体感で見ると日経平均株価も株式市場全体も「ボックス圏」を推移中と、私は判断します。
とはいえ、動きが出てきていることをふまえると、ここから先はトレンドの発生も見込まれる状況だと分析します。
来週(11月第3週)の日経平均株価の予想レンジとシナリオ:上値5万1000円のボックス圏予測
日経平均株価を基準に見ると、先週から横ばい状態になっていると読み取れます。10/31をピークに下落し膠着状態に入っています。
一方で、超長期的に見れば、明確な下落状態には陥っていないこともあり、上昇トレンドのように見えます。
なお、日経平均株価は、この水準までくると、本来であれば二次曲線のようにもっと急カーブの上昇になるはずです。
しかし、それが緩やかな上昇であるということは、超長期的に見た場合、緩やかに上昇ではなく「ほぼ変動なし」とも分析できます。
よって、日経平均株価は引き続きボックス圏を推移していると、私は分析します。
そして、日経平均株価のボックス圏の範囲は、引き続き「上値:4万9000円~下値:4万4000円」で見ていくのが良いと考えます。
ただし、変動率に対しての円の動きが大きくなっているので、上値は「2000円程度の上振れ」を想定することをオススメします。
一方、株トレンド指数を見ると、今週は天井指数と空売り指数の水準が上がっていることから、上昇トレンドの入口に入った可能性があると判断します。
ただし、上昇の確率は、順張り戦略の勝率で考えると「40%」程度です。60%の確率がダマシなので、まだ中立的に見る必要があります。
加えて、まだ上昇トレンドに入ったわけではないので、株式市場全体も「ボックス圏を推移」していると判断します。
今は、ボックス圏を上抜けしようと準備をしている状況です。このまま勢いが増せば上抜けできますが、増さなければ失速、そのような分岐点にいると読み取ります。
来週の日経平均株価の予想シナリオとレンジ
このように今週の株式市場も、日経平均株価と株トレンド指数の両指数を見ての通り、引き続きボックス圏を推移していると、私は判断します。
ただし、先週と違うのは、日経平均株価はボックス圏内で膠着状態ですが、株式市場全体は”上昇の準備”に入っていることです。
もし、ここから株式市場全体が上昇すると、これに連動して日経平均株価が上昇することもあると思います。
ただ、そのような状況になると、日経平均株価だけを見ていると、上昇に乗り遅れることが十分に考えられます。
よって、ここからは日経平均株価だけを見るのではなく、株トレンド指数を中心に見て、日経平均株価を補助的に使っていくのが良いでしょう。
なお、来週の日経平均株価は、引き続きこのような範囲を推移すると分析します。
▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:4万9000円~下値:4万4000円
誤差が出た場合の上値も同様に、+2000円の「5万1000円」程度で見ておきましょう。
また、引き続き注意点があります。それは円単位での変動幅が大きくなることです。
変動率で見ると、そこまで到達していない場合でも、円単位の変動幅の大きさを見て、大きく下落したと錯覚する可能性があります。
もし、株式市場全体がボックス圏を上抜けすると、日経平均株価はこの上値目安を一気に超えることが想定されます。
青天井というわけではありませんが、もし株式市場全体が上抜けした場合は、日経平均株価は大きく上振れすると考えておくと良いでしょう。
投資主体別売買動向:需給バランスから見る外国人投資家の「売り越し転換」と今後の市場影響
補足としての日本株市場の根底部分である株式市場全体の最新の需給バランスも見ておきましょう。
・外国人投資家:買い越し → 売り越しに変化(↘)
・個人投資家:売り越し → 買い越しに転換(↗)
・日本の機関投資家:小さく売り越し → 買い越しに転換(↗)

三者をまとめると、全体の需給バランスは「明確な買い越し」です。このときの日経平均株価は5万円台に下落したタイミングでした。
この需給バランスからみれば、株式市場は上昇しています。しかし、実際はそこまでの上昇が見られませんでした。
この点を考慮すると、三者の売買する銘柄に買いと売りが入り、需給バランスを打ち消し合ってしまったのかもしれません。
判断が難しいところではありますが、データを見る限りそのようなことが想定されます。
では、改めて各投資家の詳細を見てみましょう。
外国人投資家の動きとその示唆
外国人投資家は、5週振りに売り越しに転換しました。ただし、まだそれほど大きな売り越しではありません。10月第5週の買い越し分が売り越しに回った程度です。
もし、このまま売り越しが続き拡大するようであればリスクが高まりますが、現時点ではそこまでのリスクはありません。
引き続き最新データを追いかけながら、そのような動きがないかだけは確認していきましょう。
個人投資家の傾向と注意点
次は、私たち個人投資家です。売り越しから買い越しに転換しました。買い越しの水準は、3~4月以来の大きさです。
ただ、私たち個人投資家は、これまでの傾向を見る限り、買い越し水準が維持されることが少ないです。
また、日経平均株価の推移に投資判断を左右されやすい側面もふまえると、次週は買い越し水準が一気に下がっているかもしれません。
この点だけは気がかりですので、引き続き最新データを追いかけていきましょう。
日本の機関投資家の今後
最後に日本の機関投資家です。14週振りの買い越しです。最も動きが読みにくい日本の機関投資家ということもあり、突如買い越しに転じました。
もし彼らの買い越しがなかったら、日経平均株価は5万円維持が難しかったかもしれません。
膠着状態ではありますが、5万円を維持するのと、割ってしまうのでは、個人投資家の動きが変わりますので、日本の機関投資家が買い支えになったとも言えそうです。
ただし、なかなか買い越しが長く続かない傾向もあるのが日本の機関投資家です。
最新データで、どちらのポジションになっているかを追いかける必要がありそうです。
国内外投資家の売買動向から見た来週の見通し
以上が三者の状況です。三者ともポジションが転換しました。しかし、日経平均株価や株トレンド指数ともあまり連動していない状況です。
それをふまえると、前述の通り特定の銘柄だけが売買された可能性があります。こうなると、次の展開が読みにくい状況です。
来週は、需給バランスからは予測が難しいので、あえてここは考えずに判断するのが良いと考えます。
かえって、この情報が余分になると思いますので、最新データが出てから内容を見て、判断材料になるか考えたほうが良いと私は考えます。
まとめ:ボックス圏での「円単位の錯覚」と投資家への最終アドバイス
このように今週の株式市場は、一言でいえば「日経平均株価は膠着状態だが、株式市場全体は上昇の入口に来ている状態」です。
上昇する確率は40%なので、60%の確率でダマシであることが前提です。しかし、株トレンド指数が、この動きを示しているのもデータ分析できます。
よって、来週の株式市場は、日経平均株価と株式市場全体を切り分けて見ていくことをオススメします。
まず、日経平均株価から整理すると、引き続き以下の範囲でボックス圏を推移することが想定されます。
▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:4万9000円~下値:4万4000円
ただし、上振れを考慮し、上値は5万1000円程度まで上昇の可能性があります。
もし、株式市場全体が上昇トレンドに入る場合、さらに上振れする可能性もあります。ですが、そのときは株式市場全体の上昇から出遅れることを想定されます。
そして、株式市場全体は、ダマシでなければ来週上昇することが想定されます。ここは日経平均株価の推移では読み取れない部分です。
株トレンド指数の中でも上昇傾向を示す天井指数に着目しながら動向を見ていきましょう。
なお、ダマシの場合は、週明けの天井指数は少しずつ水準を下げていきます。そうならず、上下を繰り返していくと、より上昇の可能性が増します。
天井指数の動向次第で、来週の動きが掴めますので、念入りに天井指数を追いかけていきましょう。
この記事は、独自の株トレンド指数を用いた分析レポートの一部です。すべての予測実績検証は過去の分析レポート一覧からご覧いただけます。
▼ご注意▼
※1.こちらの分析結果はあくまでも日本株市場全体の傾向をもとにした内容です。個別株の動向と必ずしも一致するわけではありません。あくまでも市場全体の動向として、ご参考くださいませ。
※2.本記事は2025/11/13(木)時点の株式市場の状況をもとに執筆しました。データや分析内容については、誤差が生じる場合がございます。予めご了承くださいませ。
当記事は、特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、情報提供を目的としています。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。当記事によって生じた損害等について、当社は一切の責任を負いかねます。


