執筆者: 秋山大介|データ・アナリスト| プロフィール詳細
(独自の「株トレンド指数」を開発・運用。需給バランスに基づく分析で定評あり。)
日経平均株価 が一時4万9000円を割ったものの、終値では5万円目前まで回復しました。
この「右往左往」とも言える値動きは、市場の膠着状態を示しています。
一方で、、過熱感を見るテクニカル指標RSIで日経平均株価を見ると、今週は過熱感が下がり「中立~売られすぎ」の水準まで下がったことで、再上昇の期待も持てる状況です。
そこで今回も相場の動きを数値で見える化した「株トレンド指数」や先週の動向をもとに、今週の市場動向と来週の予想レンジを徹底分析します。
【独自指標】株トレンド指数が示す「日経平均と市場全体の乖離」を徹底検証
こちらをご覧ください。こちらは11/7〜11/20の日経平均株価と株トレンド指数の状況です(株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら)。

株トレンド指数は、以下のような4つの指数で構成されています。
・天井指数…「170」付近で、相場全体の上昇トレンドが終焉する傾向
・底値指数…「220~420」付近で、相場全体が底値に近づき適正株価まで回復傾向
・押し目買い指数…30に近い水準になると押し目買い戦略が機能しやすい傾向
・空売り指数…「50」付近で、相場全体の上昇にブレーキが掛かる傾向
>>株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら
株トレンド指数の分析:日経平均株価の下落と市場全体が連動しなかった理由
今週の株式市場は、日経平均株価と株式市場全体が”ほぼ連動している週”でした。
ただし、日経平均株価の円単位を基準に方向感を捉えている人と、私たちのように株トレンド指数も使って方向感を捉えている人では”差異”が生じた週でした。
同じ日経平均株価を基準にしても、変動率で方向感を捉えている人は、あまり差異がなかったでしょう。
今週の日経平均株価の円単位での推移は、端的に言えば「右往左往状態」でした。一方、株トレンド指数では、方向感が定まらないと分析できましたが、右往左往とまではいきません。
現時点で、両者の損益に直結する状況ではありませんが、次の展開に向けメンタル面に影響を与える週だったと考えます。
日経平均株価の下落ほど、株式市場全体は下落していない
では、詳細を見てみましょう。週初め11/17の日経平均株価は0.1%下落しました。円単位では52円下落です。下落率、円単位のどちらで見ても、これは水平状態の推移と判断します。
株トレンド指数を見ても、同様に水平状態の推移が見られました。上昇傾向を示す天井指数の水準が先週末11/14から微減しました。空売り指数も同様です。
この2つの指数があまり変わらなかったということは、日経平均株価の推移と同様、株式市場全体も水平状態だったと分析できます。
11/18の日経平均株価は3.22%下落しました。円単位で1620円下落です。3%変動したのは10/20の3.7%上昇以来です。
今月も1000円以上の下落がありましたが、今回は”急落”したような印象があったかもしれません。
これに連動するように、株トレンド指数も下落傾向を示す底値指数が突如「26」まで上がりました。20を超えたのは4/16以来です。
急落や大幅下落の水準ではありませんが、底値指数の動きを見ると、悲観的に見た投資家がいてもおかしくない状況だったでしょう。
ただ、底値指数の水準の通り、実際には急落や大幅下落の水準には至っていないと判断できます。
同時に、押し目買い指数も上昇していることがポイントです。下落傾向に入る場合は、押し目買い指数の水準は上がらず、底値指数だけが上昇します。
しかし、通常10になることも少ない押し目買い指数が「22」まで上昇しました。
異常値の可能性もあるので、その場合は押し目買いとして機能しない可能性があるものの、2桁まで上昇したことで、この日の下落が悲観的ではないと詳しく分析できます。
11/19の日経平均株価は、前日の流れのまま-0.34%下落しました。円単位では165円下落です。この水準ですので、11/17同様水平状態と判断できます。
株トレンド指数を見ると、下落傾向を示す底値指数の水準がわずかに上がり「27」になりました。
もし前日の下落が大幅下落や暴落の予兆だったとすると、ここで底値指数の水準が上がります。
しかし、わずかな上昇だったことを考えると、前日の下落は急落や、大幅下落・暴落の予兆ではないと分析できます。
前日同様、押し目買い指数も2桁の水準を維持しています。前日が22でしたので、13まで下がると押し目買いの勢いがなくなったように見えるかもしれません。
ですが、2桁に到達しただけで、押し目買いの動きをさせるのがこの指数の特性ですので、引き続き押し目買いの動きになることが期待できました。
日経平均株価も株トレンド指数も前日から水平状態でしたが、その裏で押し目買いの動きをする準備をしていたと判断するのが妥当でしょう。
11/20の日経平均株価は、2.65%上昇しました。円単位では1286円上昇です。前日までの3日続落分の回復には届きませんが、あとわずかで5万円回復の水準でした。
株トレンド指数を見ると、最も水準が高かったのは、上昇傾向を示す天井指数でした。前日の9から26まで上昇しています。
しかし、同時に下落傾向を示す底値指数の水準も、前日よりは下がったものの、20の水準を維持していました。
この動きを見る限り、前日までの押し目買い指数の推移から上昇したものの、一方では下落方向へ引っ張っていることが分かります。
また、この株トレンド指数の動きを見ても分かる通り、日経平均株価と株式市場全体が、この日だけは違う動きをしました。
日経平均株価は上昇、株式市場全体は”均衡状態”だったと分析します。つまり、日経平均株価の上昇の動きほど、株式市場全体は上昇していないと判断できます。
今週の市場総括:ボックス圏推移だが、これまでと違い下値に向かっていると分析
このように今週の株式市場は、日経平均株価と株トレンド指数の動きがほぼ連動しているものの、11/20だけ明確に違う動きをしていました。
そして、先週の段階で上昇の入口の可能性がありましたが、今週の動きで「ダマシ」であることが確定しました。
11/20は均衡状態だったこともふまえると、日本株市場は依然としてボックス圏を推移していると私は判断します。
これまでは同じボックス圏でも上抜けを狙える水準を推移していましたが、今週はボックス圏の下値に向かうような推移でした。
ポジティブに言えば、株価に動きが出てきたので、今後の展開に期待ですが、ネガティブに言えば下落リスクが出てきたようにも見える状況です。
まだボックス圏を下抜けしたわけではありませんが、これまでとは状況が違うことだけは把握しておきましょう。
【来週の予想レンジとシナリオ】日経平均株価の下値は4万4000円でボックス圏推移を予測
日経平均株価を基準に見ると、先週の横ばい状態から一段下げたような推移をしています。
ただし、まだ再上昇できないような下げではありません。今は、一時的にボックス圏の下値付近や中心に向かって推移しているタイミングだと読み取れます。
よって、日経平均株価のボックス圏の範囲は、引き続き「上値:4万9000円~下値:4万4000円」で見ていくのが良いと考えます。
ただし、変動率に対しての円の動きが大きくなっているので、上値は「2000円程度の上振れ」を想定することをオススメします。
一方、株トレンド指数を見ると、今週は全体的に動きが少ない週だったと分析します。
先週までは再上昇の入口になりそうな動きをしていましたが、そこまでの動きが見られません。ここはダマシだったと判断するのが妥当です。
週単位で見ると、下落傾向を示す底値指数の水準が上がりましたが、この期間で見ると気にするほどの状況ではないことが分かります。
全体的に、次の展開に向けて、動き出す準備をしているようにも見えます。
株トレンド指数を見ても、そのような推移ですので、ここからも引き続きボックス圏を推移していると分析できます。
来週の日経平均株価の予想シナリオとレンジ
このように今週の株式市場も、日経平均株価と株トレンド指数の両指数を見ての通り、引き続きボックス圏を推移していると、私は判断します。
ただし、先週と違うのは、ダマシが確定し、ボックス圏の上値付近に向かう動きではなく、下値付近に下がろうとしている部分です。
このような動きを考慮すると、来週の日経平均株価は、まだ上にも下にも動いていませんので、引き続きこのような範囲を推移すると分析します。
▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:4万9000円~下値:4万4000円
誤差が出た場合の上値も同様に、+2000円の「5万1000円」程度で見ておきましょう。
特に今は、一時的に日経平均株価が崩れているように見える場面があります。しかし、この下値付近に到達しない限りは、下抜けに向かうトレンドとは判断できません。
よって、基本的には、先週までと同じボックス圏を推移しますが、やはり下値付近に向かう動きがあることを念頭に置いておきましょう。
しばらく上振れを想定する展開でしたが、今度は中心~下値付近での動きに変化しました。
そのような変化もありますので、これまでとは違って、やや悲観的に見ながら次の展開を考えていくと良いかもしれません。
最新の需給バランス分析:外国人投資家、個人、機関投資家の売買動向と市場影響
補足としての日本株市場の根底部分である株式市場全体の最新の需給バランスも見ておきましょう。
・外国人投資家:売り越し → 買い越しに転換(↗)
・個人投資家:買い越し → 売り越しに転換(↘)
・日本の機関投資家:買い越し → 売り越しに転換(↘)

三者をまとめると、全体の需給バランスは「やや売り越し」です。このときの日経平均株価は5万円台で膠着しているときでした。
この需給バランスを見ると、11月1週ほど売買がされていないので、最新週は株価変動が小さく、株価が動きにくい週だと判断します。
また、11月1週と最新週では、買いと売りポジションの投資家が反対になっています。国内外で違う動きをしていました。
このような点を考慮すると、日経平均株価の膠着の通り、三者とも今後の予測が難しい状況に陥っていたのかもしれません。
では、改めて各投資家の詳細を見てみましょう。
外国人投資家の動きとその示唆
外国人投資家は、買い越しに転換しました。5週連続買い越しから、1週売り越しを挟んで、再び買い越しに転じています。
あまり意識するところではないかもしれませんが、外国人投資家は日本株市場の直近の天井をここと見たのかもしれません。
もしくは、一時的なもみ合いと見て、次の展開を待っている状況かもしれません。
いずれも予想程度の話ではありますが、外国人投資家から見て、今の日本株市場は積極的に買い越す材料がないのかもしれません。
このようなことをふまえると、ここから外国人投資家は、何を材料に動き出すかが、今後のポイントになりそうです。
個人投資家の傾向と注意点
次は、私たち個人投資家です。買い越しから売り越しに転換しました。直近の動向を見ると、買い越しと売り越しが頻繁に入れ替わっています。
それと日経平均株価の推移を考慮すると、個人投資家はここが天井というよりは、節目の水準にきたことで利益確定に入っていると推測されます。
直近の株式市場では、少しずつ株価上昇の材料になりそうなものが出てきていますが、一方で今週のように日経平均株価が難しい動きをしています。
そのような状況をふまえると、私たち個人投資家は、同じポジションを取り続けるよりも、日経平均株価の推移に右往左往するようなポジションになると予測します。
日本の機関投資家の今後
最後に日本の機関投資家です。14週振りの買い越しから、再び売り越しに転換しました。
ちょうど、日経平均株価が膠着状態になっていたことを考慮すると、ここでいったん利益確定に入ったのかもしれません。
そして、次の展開に合わせて、一時的にポジションをニュートラルに近づけているのではないでしょうか。
日本の機関投資家は、年間を通じて積極的なポジションを取ることが少ないので、しばらくこのような動きが続くかもしれません。
国内外投資家の売買動向から見た来週の見通し
以上が三者の状況です。今週は三者ともポジションが入れ替わりました。そして、11月1週同様に、国内外の投資家で反対のポジションを取っています。
ただ、どの投資家を見ても、日経平均株価の次の展開の予測が難しい通り、自分たちの次の動きをどうするか迷っているようにも見受けられます。
まだ、株式市場を明確に動かすような材料が出ていないことを考慮すると、もうしばらく三者とも次が読みにくいポジション取りをしていくと私は分析します。
まとめ:ボックス圏での「円単位の錯覚」と投資家への最終アドバイス
このように今週の株式市場は、先週の上昇への期待がダマシであったことが確定しました。
加えて先週までのボックス圏の上値付近を目指そうとする動きから、中心~下値付近を目指す動きに変化しています。
まだ下落リスクがあるわけではありませんが、このような変化があることは十分に抑えておきましょう。
改めて、来週の日経平均株価の範囲をお伝えすると、このようになります。
▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:4万9000円~下値:4万4000円
これまでもお伝えしている通り、上昇気味になる場合は上振れを考慮し、上値は5万1000円程度まで上昇を考えておく必要があります。
ただし、今週の株式市場を見る限り、来週もボックス圏の中心~下値付近を推移すると分析します。
なお、万が一ここから下落リスクが高まる場合は、下落傾向を示す底値指数の水準が段階的に上がっていきます。
反対に言えば、そこまでの動きがない限り、ボックス圏を下抜けするような下落リスクはないと考えます。
来週は、むしろボックス圏特有の動きである、方向感が定まらない動きが続くと予測します。
そのようなときに日経平均株価を円単位で見てしまうと株式市場全体の動きを錯覚しますので、日経平均株価を見るときは変動率捉えましょう。
加えて、株トレンド指数も含めて分析することで、より精度高く株式市場の動向を見ていきましょう。
この記事は、独自の株トレンド指数を用いた分析レポートの一部です。すべての予測実績検証は過去の分析レポート一覧からご覧いただけます。
▼ご注意▼
※1.こちらの分析結果はあくまでも日本株市場全体の傾向をもとにした内容です。個別株の動向と必ずしも一致するわけではありません。あくまでも市場全体の動向として、ご参考くださいませ。
※2.本記事は2025/11/13(木)時点の株式市場の状況をもとに執筆しました。データや分析内容については、誤差が生じる場合がございます。予めご了承くださいませ。
当記事は、特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、情報提供を目的としています。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。当記事によって生じた損害等について、当社は一切の責任を負いかねます。


