執筆者: 秋山大介|データ・アナリストプロフィール詳細
(独自の「株トレンド指数」を開発・運用。需給バランスに基づく分析で定評あり。)

日経平均株価 が5万円を回復しました。

先週は一時4万9000円を割る場面もありましたが、今週に入り3日続伸し、終値ベースで5万円という重要な節目を取り戻しています。

過熱感を見るテクニカル指標RSIで日経平均株価を見ると「中立」に変化し、再び相場が動き出す可能性を示唆しています。

ただし、この5万円は心理的な節目であり、テクニカル的には依然として強い上値抵抗線(ボックス圏の上限)として機能しています。

一方、この5万円回復の裏で、独自の「株トレンド指数」は日経平均の上昇幅と市場全体の勢いに「明確な乖離」が発生していることを示している動きもあります。

そこで今回も相場の動きを数値で見える化した「株トレンド指数」や先週の動向をもとに、今週の市場動向と来週の予想レンジ(上値5万2000円)を徹底分析します。

【独自指標】株トレンド指数が示す「日経平均と市場全体の上昇幅の乖離」を徹底検証

こちらをご覧ください。こちらは11/13〜11/27の日経平均株価と株トレンド指数の状況です(株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら)。

【2025年11月第4週】市場動向と 日経平均株価 の変動
【2025年11月第4週】市場動向と 日経平均株価 の変動

株トレンド指数は、以下のような4つの指数で構成されています。

天井指数|相場全体の上昇トレンドが終焉する傾向を示す(目安:「170」付近)
底値指数|相場全体が底値に近づき適正株価まで回復する傾向を示す(目安:「220~420」付近)
押し目買い指数|押し目買い戦略が機能しやすい傾向を示す(目安:「30」に近い水準)
空売り指数|相場全体の上昇にブレーキが掛かる傾向を示す(目安:「50」付近)
>>株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら

株トレンド指数の分析:日経平均株価と市場全体が上昇幅が連動せず

今週の株式市場は、日経平均株価と株式市場全体が”やや連動していない週”でした。(今週は祝日の関係で取引日数が3日間に短縮された都合から参考データです)

一見すると連動しているように見えます。しかし、実際は両者の上昇の勢いが全く違いました。

日経平均株価は3日続伸でしたが3.14%上昇と、それほど大きな上昇ではありませんでした。

これに対して株式市場全体は、上昇傾向を示す天井指数の水準が88まで上昇し、日経平均株価の上昇幅よりも強い上昇を見せました。

両者も上昇している部分は同じですが、日経平均株価は小幅上昇または少しずつ上昇を続け、株式市場全体は明確に上昇したという違いがありました

ただし、株式市場全体が上昇したと言っても、上昇トレンドが発生したと判断できるほどではありません。

日経平均株価の上昇よりも、株式市場全体は大きく上昇

では、詳細を見てみましょう。週初め11/25の日経平均株価は0.07%上昇しました。円単位では33円上昇です。

下落率、円単位のどちらで見ても、これは水平状態の推移と判断します。

株トレンド指数を見ても、同様に水平状態の推移でした。上昇傾向を示す天井指数、下落傾向を示す底値指数などが、先週末とほぼ同水準でした。

よって、この日は両指数が同じ動きをしていたと判断できます。そこから転換したのが、11/26です。

11/26の日経平均株価は1.85%上昇しました。円単位で899円上昇です。

円単位で見ると約900円上昇なので大幅上昇に見えるかもしれません。しかし、実際は変動幅の通り、小幅上昇にとどまっています。

一方、株トレンド指数を見ると、上昇傾向を示す天井指数が「88」まで上昇しました。前日が39でしたので、一気に2倍近くまで上昇(39→88)しています。

この水準まで上昇したのは、10/27以来です。そのときは103まで上昇しましたが、それに次ぐ水準です。

天井指数の上限目安は170ですので、まだ上昇には余力があります。もしくは、本格的な上昇ではなく、一時的な上昇だったから、この水準にとどまった可能性があります。

ゆえに、この日の天井指数は急上昇しましたが、まだ上昇トレンドが発生したとはいえないと分析します。

とはいえ、先週は下落傾向と上昇傾向が入り乱れる状況でしたので、株式市場全体が上昇する場面が見られたのは良いことです。

11/27の日経平均株価は1.23%上昇しました。円単位では608円上昇です。3日続伸したこともあり、日経平均株価も上昇の勢いが出てきたように見えます。

しかし、前述の通り3日続伸では上昇率が3.14%にとどまっていることから、株式市場全体ほど上昇していないことが分かります。

株トレンド指数を見ると、前日から勢いはなくなりましたが、上昇傾向を示す天井指数の水準は「61」でした。

本格的な上昇トレンドには満たない水準ですが、前日から50以上を超えています。

下落傾向を示す底値指数の水準を見ても、株式市場全体が上昇傾向であることが分かります。

今週の市場総括:ボックス圏を上下する動きから「上値」を目指す展開へ

このように今週の株式市場は、日経平均株価と株トレンド指数の動きが連動しているように見えますが、上昇勢いが全く違うと判断します。

日経平均株価は小幅上昇、株式市場全体は上昇トレンドが発生してはいないものの、上昇傾向が続いている状況です。

ただ、ここで冷静に見なければならないのが依然としてボックス圏を推移していることです。

日経平均株価は見ての通りボックス圏を上下しています。株式市場全体は天井指数の水準が上がっているものの、ボックス圏を上抜けするような勢いには届いていません。

先週がボックス圏の下値付近に向かって動いていたのに対して、今週の株式市場は、ボックス圏の上値付近に向かって上昇していると判断するのが妥当です

先週から急展開のような動きを見せています。ただし、これがボックス圏特有の上下のどちらに動くか分からない動きでもあります。

株式市場全体は上昇傾向が見られますが、日経平均株価の推移の通り来週はどうなるか分からないくらいの厳しさで動向を見ていくのが良いと考えます。

【来週の予想レンジとシナリオ】日経平均株価は「上値:5万円~下値:4万5000円」でボックス圏推移を予測

日経平均株価を基準に見ると、先週はボックス圏の下値に向かって推移していましたが、今週は上値に向かって推移していると読み取れます。

結果的に、この推移によって先週から今週にかけて横ばい状態に推移し、英字のWのような形になっています。

この形に意味があるわけではありませんが、下がった分だけ上がったことを象徴するような形になりました。

よって、日経平均株価のボックス圏の範囲は、多少水準を挙げて「上値:5万円~下値:4万5000円」で見ていくのが良いと考えます

ただし、変動率に対しての円の動きが大きくなっているので、上値は「2000円程度の上振れ」を想定することをオススメします。

一方、株トレンド指数を基準に見ると、今週は11月10日の週のように動きが出てきた週でした。

ただ、今週は3日間しかないので、これが週明けも続くかがポイントになると判断します。

今の段階では、上昇トレンドとは判断できず、一時的な上昇と判断します。

週明けも同じような水準の天井指数が発生すれば、今週の上昇をきっかけに本格的な上昇トレンドの発生に向けて動き出すと分析します。

反対に、週明けに天井指数の発生が途切れてしまうと、そこで今週の上昇は途切れ、今度は下落傾向に動きだす恐れもあります。

やはり、先週から今週の動きの通り、株式市場全体もボックス圏を推移していると分析できます

来週の日経平均株価の予想シナリオとレンジ

このように今週の株式市場も、日経平均株価と株トレンド指数の両指数を見ての通り、引き続きボックス圏を推移していると、私は判断します。

ただし、先週から急展開し、ボックス圏の下値に向かって推移するのが止まり、今週はボックス圏の上値に向かって推移しています。

一方で上値抵抗線(ボックス圏の上限)が5万円で機能している動きも見られます

この点をふまえると、日経平均株価は、これまで考えていたボックス圏から多少水準を上げ、以下の範囲を推移すると分析します。

▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:5万円(上振れ5万2000円)~下値:4万5000円

誤差が出た場合の上値も同様に、+2000円の「5万2000円」程度で見ておきましょう

これまでよりも1000円水準を上げました。日経平均株価がこの水準ですので、1000円上げてもそれほど変わりません。

しかし、先週と今週の動きで日本株市場は底堅いと判断します。もう少し水準を上げても良い考えもありますが、ここは厳しめに見て、この水準が妥当だと判断しました。

このボックス圏を推移していることが前提ではありますが、週明けポイントになるのは、天井指数の動向です。

これまでの分析をふまえると、ボックス圏の上値を目指す程度の上昇にとどまると予測します。

もし週明けも天井指数の水準が上がるようであれば状況は変わり、ボックス圏の上抜けを目指す上昇トレンドの発生につながるでしょう。

反対に、週明けに天井指数が上昇しない場合は、再び先週や今週のようなボックス圏を上下する展開になると予測されます。

いずれも週明けの天井指数が分岐点になりますので、週初めの天井指数の水準は必ず確認しておきましょう。

投資家動向の推測:需給バランスが示唆する市場の勢い

補足としての日本株市場の根底部分である株式市場全体の最新の需給バランスも見ておきましょう。今週は祝日があった都合で、投資主体別売買動向の最新データは次週公開となります。

ここでは先週時点でのデータをもとに、今週の日経平均と株トレンド指数の動きから、最新週の動向を推測します。

【先週の確定データ】
・外国人投資家:売り越し → 買い越しに転換(↗)
・個人投資家:買い越し → 売り越しに転換(↘)
・日本の機関投資家:買い越し → 売り越しに転換(↘)

投資主体別売買動向
『投資主体別売買動向 | 信用・手口 | トレーダーズ・ウェブ』をもとに筆者作成

先週のデータでは、全体の需給バランスは「やや売り越し」でした。この状況で今週、株価が上昇に転じたという事実を考慮し、各投資家の動きを推測してみましょう。

推測されるのは、日経平均株価採用銘柄の値がさ株が下落し、その他の銘柄の上昇を打ち消してしまったことや、採用銘柄以外の銘柄が上昇する動きです。

そういった動きがあると、今週の日経平均株価と株式市場全体の動きのつじつまが合います。

では、改めて各投資家の詳細を見てみましょう。

外国人投資家の動きとその示唆(推測)

外国人投資家は、先週買い越しに転換しました。今週の日経平均株価の動きから推測すると、この買い越しは続いていると見ています。

ここで売る材料もないことから、最新週も同水準または、やや買い越しが増えていると推測します。

いずれにせよ、外国人投資家は日本株市場の底堅さを評価し、引き続きニュートラル~買い越しを維持している可能性が高いと考えます。

個人投資家の傾向と注意点(推測)

次は、私たち個人投資家です。先週は売り越しに転換しました。直近の動向を見ると、買い越しと売り越しが頻繁に入れ替わっています。

今週の日経平均株価と株式市場全体の動きをふまえると、個人投資家には動きがあったと推測します。個人投資家は日経平均株価を基準に利益確定売りをする傾向があることをふまえると、ここで売り越しは想定しにくいです。

また、各指数の動きをふまえても、ここでニュートラルポジションというのも考えにくいです。

消去法のようになりますが、この2点をふまえると買い越しに転換しているのではないかと推測します。

日本の機関投資家の今後(推測)

最後に日本の機関投資家です。先週は売り越しに転換しました。日本の機関投資家は、年間を通じて積極的なポジションを取ることが少ないため、今週も小さな動きになっているかもしれません。

外国人投資家が買い、個人投資家が買い、の推測から行くと、日本の機関投資家は小さな売り越しと推測します。

国内外投資家の売買動向から見た来週の見通し(総括)

以上の推測を総合すると、今週の株式市場は、外国人投資家と個人投資家が買い、日本の機関投資家は売り越しと分析します。

全体の需給バランスで見ると「多少買いが優勢」だと考えます。株価上昇の勢いを後押しできるかどうかが、週明けの大きなポイントになるでしょう。

まとめ:週明けの天井指数が分岐点!ボックス圏の上値を目指す動きへの最終アドバイス

このように今週の株式市場は、日経平均株価と株式市場全体の上昇勢いが違っていたものの、ボックス圏の推移が続いていることに変化はありませんでした。

ですが、先週まではボックス圏の下値に向かって動き出し、今週は上値に向かって動き出すという方向感を捉えるのが難しい状況です。

一方で、株式市場全体だけを見ると、株トレンド指数の天井指数の通り、上昇トレンドには届かないものの、一時的な上昇が見られます。

そのような背景を考慮して、来週の日経平均株価の範囲を予想すると、このようになります。

▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:5万円(上振れ5万2000円)~下値:4万5000円

上昇気味になる場合は上振れを考慮し、上値は5万2000円程度まで上昇を考えておく必要があります。

このボックス圏を推移していることが前提ではありますが、週明けポイントになるのは、天井指数の動向です。

もし週明けも天井指数の水準が上がるようであれば状況は変わり、ボックス圏の上抜けを目指す上昇トレンドの発生につながるでしょう。

反対に、週明けに天井指数が上昇しない場合は、再び先週や今週のようなボックス圏を上下する展開になると予測されます。

いずれも週明けの天井指数が分岐点になりますので、週初めの天井指数の水準は必ず確認しておきましょう。

この記事は、独自の株トレンド指数を用いた分析レポートの一部です。すべての予測実績検証は過去の分析レポート一覧からご覧いただけます

▼ご注意▼ ※1.こちらの分析結果はあくまでも日本株市場全体の傾向をもとにした内容です。個別株の動向と必ずしも一致するわけではありません。あくまでも市場全体の動向として、ご参考くださいませ。 ※2.本記事は2025/11/27(木)時点の株式市場の状況をもとに執筆しました。データや分析内容については、誤差が生じる場合がございます。予めご了承くださいませ。

最終的な投資判断について】

当記事は、特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、情報提供を目的としています。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。当記事によって生じた損害等について、当社は一切の責任を負いかねます。