執筆者: 秋山大介|データ・アナリスト| プロフィール詳細
(独自の「株トレンド指数」を開発・運用。需給バランスに基づく分析で定評あり。)
今週の日経平均株価は、週初めに心理的な節目である5万円を割る動きを見せましたが、その後すぐに再上昇し5万1000円台を回復しました。
これは11/13以来の高値圏維持です。しかし、依然として相場全体は方向感が読みづらいボックス圏での推移が続いています。
過熱感を見るRSIは引き続き「中立」を維持し、相場は上下どちらにでも動く可能性があります。
特に今週は日経平均株価と株式市場全体の動きがほぼ連動し、次の大きな展開を読むのが難しい状況です。
本レポートでは、相場の動きを数値で見える化した独自の「株トレンド指数」、および国内外投資家の最新需給バランスをもとに、来週の日経平均株価の予想レンジ(上値5万2000円)と市場の見通しを徹底分析します。
【株トレンド指数で分析】日経平均と市場全体の「押し目買い」と「乖離」の検証
こちらをご覧ください。こちらは11/20〜12/4の日経平均株価と株トレンド指数の状況です(株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら)。

株トレンド指数は、以下のような4つの指数で構成されています。
・天井指数|相場全体の上昇トレンドが終焉する傾向を示す(目安:「170」付近)
・底値指数|相場全体が底値に近づき適正株価まで回復する傾向を示す(目安:「220~420」付近)
・押し目買い指数|押し目買い戦略が機能しやすい傾向を示す(目安:「30」に近い水準)
・空売り指数|相場全体の上昇にブレーキが掛かる傾向を示す(目安:「50」付近)
>>株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら
株トレンド指数の分析:日経平均株価と市場全体の乖離は少なくほぼ連動
今週の株式市場は、日経平均株価と株式市場全体が先週と変化し”ほぼ連動している週”でした。
ただし、細部に違いもあります。それは株式市場全体が、週半ばにかけて「押し目買い」の動きに入っていたことです。
これは、日経平均株価の推移だけでは判断できず、株トレンド指数の”押し目買い指数”を見ることで判断できるものでした。
その押し目買い指数は、2日連続で2桁の「14」の水準に到達しました。この動きに連動し、日経平均株価も12/4に2.3%上昇しています。
先週の株式市場全体に日経平均株価よりも強い上昇が見られたことをふまえると、今週の日経平均株価5万円割れは、押し目買いの動きだったと分析できます。
しかし、まだ上昇トレンドが発生したわけではありません。今週の日経平均5万円割れからの再上昇は、あくまで小さな上昇の中で発生した押し目買いの動きだと判断します。
日経平均株価の上昇は、株式市場全体は押し目買いの動きに連動
では、詳細を見てみましょう。週初め12/1の日経平均株価は1.89%下落しました。円単位では950円下落です。
円単位で見ると約1000円下落と5万円割れがあったので、人によっては大幅下落と感じたかもしれません。
しかし、実際には下落率の通り小幅下落の範囲です。直近の変動率を見ても類似していることから、通常の変動と判断できます。
やはり、日経平均株価は、この水準までくると、円単位はあくまで目安で、日々の変動は割合で捉えないと錯覚してしまいます。
この日は、改めてそれを象徴する動きだったと言えます。
株トレンド指数を見ると、全体としては小さく上昇傾向ではあるものの、先週からの上昇が収束に向かった動きが連動しました。
先週の段階で、上昇にブレーキを掛ける空売り指数の水準が「30」に到達しました。この流れの通り、上昇傾向を示す天井指数の水準が下がり、日経平均も下落したと分析します。
12/2の日経平均株価は変わらずでした。円単位で見ると0.17円上昇です。完全に水平状態の推移です。
株トレンド指数を見ると、ここでは少々連動性がなくなりました。同日は、日経平均株価の水平状態が示す通り、上昇傾向を示す天井指数の水準がやや下がりました。
一方で、押し目買い指数の水準が「14」まで上昇しました。名前の通り、この指数の水準が上がると、株式市場全体が押し目買いの動きをする可能性が高まります。
2桁の水準に到達すると、この傾向が高まり、今後の押し目買いの動きへの期待が高まりました。
12/3の日経平均株価は、1.14%上昇しました。円単位では561円の上昇です。
今の水準では500円台の変動は通常ですが、円単位で変動を捉えている人の中には、大幅上昇と錯覚した人もいるかもしれません。
ただ、5万円回復には届かず、1.14%の小幅上昇でしたので、引き続き方向感なしと判断できます。
株トレンド指数を見ると、押し目買い指数が「14」を維持しました。これにより、ここから押し目買いの動きをすることが、さらに期待が高まりました。
しかし、気がかりなこともあります。先週発生した上昇が収束したのが同日ではありますが、押し目買い指数以外の指数の水準が10を割りました。
これを見る限り、いったん株式市場のトレンドがリセットされ無風状態に入ったと判断します。
12/4の動き次第ではありますが、ここで押し目買いの動きがなかったら、株式市場全体は無風状態に入ったと判断したほうが良いでしょう。
それをふまえて12/4の日経平均株価を見ると、2.33%上昇し5万1000円台を回復しました。
ただし、冷静に見なければなりません。5万1000円台を回復しましたが、上昇にそれほど勢いがあるわけではありません。
この点をふまえると、同日の上昇は前日までの押し目買い指数の動きを反映しているものの、下落分の反発程度の上昇にとどまっていることが分かります。
一方、株トレンド指数を見ると、少々違う動きが見られました。上昇傾向を示す天井指数が先週初めの水準に近づきました。
ここから、株式市場全体は、日経平均株価の反発よりも強く反発していることが分かります。
また、引き続き押し目買い指数の水準は「15」を維持しています。そうなると、株式市場全体は日経平均株価とは違い、ここから更に上昇する可能性があると分析できます。
今週の市場総括:ボックス圏を上下する動きから「上値」を目指す展開へ
このように今週の株式市場は、日経平均株価と株トレンド指数の動きがほぼ連動しているものの、細部に違いがあります。
今後の展開を読むうえで特に違っているのは、12/3、12/4です。全体感としては、同じ動きをしていますが、日経平均株価の動きよりも、株式市場全体の動きのほうが強い状況です。
先週も日経平均株価の上昇よりも、株式市場全体のほうが強い上昇をしていました。それに近いイメージです。
しかしながら、これはあくまでも依然として続く「ボックス圏」の中で起きていることです。
ボックス圏特有の推移の通り、俯瞰して見ると方向感のない動きを続けています。
一方で、方向感のない動きをしながら、上下にある程度の幅を持たせて変動しているとも捉えられます。
膠着状態になってしまうと株価が上下のどちらにも動きにくくなりますが、だんだん株価変動が大きくなり、トレンドが発生する予兆の可能性もあります。
今週に限っては、ボックス圏の「中心~上値」を推移する動きでした。この変動幅がより大きくなってくると、上抜けも期待できると分析します。
【来週の予想】日経平均株価の予想レンジ(52,000円~45,000円)とシナリオ
日経平均株価を基準に見ると、先週からボックス圏の上値付近に向かって推移していることが分かります。
よって、日経平均株価のボックス圏の範囲は、上値の誤差も含めて「上値:5万2000円~下値:4万5000円」だと分析します。
今週だけを見ると更に上昇しそうな流れに見えますが、ボックス圏の上値付近を目指す上昇に留まると判断します。
一方、株トレンド指数を見ると、今週は全体的に押し目買い指数が目立つ週であることが分かります。
また、日経平均株価の動きの通り、株式市場を牽引するようなトレンドが発生していないので、ボックス圏を推移中であることが分かります。
ここから押し目買いの動きがあると変化があると思われますが、他の視点として、天井指数が再上昇する可能性もあります。
天井指数は11月上旬から断続的に発生が続いています。先週は段階的に上昇して収束するなど、きれいな動きが見られました。
この点をふまえると、ボックス圏を上抜けするような上昇ではありませんが、それに等しい上昇が起きる可能性もあると判断します。
来週の日経平均株価の予想シナリオとレンジ
このように今週の株式市場も、日経平均株価と株トレンド指数の両指数を見ての通り、引き続きボックス圏を推移していると、私は判断します。
ただし、先週から急展開し、ボックス圏の下値に向かって推移するのが止まり、今週はボックス圏の上値に向かって推移しています。
一方で上値抵抗線(ボックス圏の上限)が5万円で機能している動きも見られます。
この点をふまえると、日経平均株価は、これまで考えていたボックス圏から多少水準を上げ、以下の範囲を推移すると分析します。
▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:5万2000円~下値:4万5000円
日経平均株価は、この水準までくると同じ変動率でも円単位の変動が大きくなります。それを考慮すると、変動率の感覚では5万円ですが、円単位では+2000円程度の誤差が出ると考えます。
下値は水準を上げても良いかもしれません。しかし、今の水準では多少の下落があれば、すぐに到達するような水準でもあります。
そのようなことをふまえて、来週の日経平均株価は、この範囲を推移すると分析します。
最新の需給バランスから見る投資家動向と市場の勢い
補足としての日本株市場の根底部分である株式市場全体の最新の需給バランスも見ておきましょう。
・外国人投資家:売り越し → 売り越し弱まる(↗)
・個人投資家:小さく買い越し → 売り越しに転換(↘)
・日本の機関投資家:わずかに売り越し → 買い越しに転換(↗)

三者をまとめると、全体の需給バランスは「売り越し」です。ここまで明確に売り越しになったのは久々です。
このときの日経平均株価は、5万円前後を一進一退で推移しているときでした。需給バランスだけで考えると、日経平均株価はもっと下落してもおかしくない状況でした。
しかし、実際にそのような下落がなかったことをふまえると、日経平均株価以外の銘柄の特定の売り越しが強かったのかもしれません。
では、改めて各投資家の詳細を見てみましょう。
外国人投資家の動きとその示唆
外国人投資家は、11月3週は明確な売り越しでしたが、その売り越しが小さくなりました。これで2週連続売り越しです。
今年の外国人投資家は買い越しが多いので、2週連続売り越しは悲観的に感じるかもしれません。
ですが、一年を通して、2~3週連続売り越しは、たびたび見られます。それ以上になると悲観的に見たほうがよいですが、まだ許容範囲です。
また、売り越し幅もまだ大きいとは言えない範囲にとどまっています。その点もふまえると、日経平均株価が5万円前後で停滞していたので、いったんここで手仕舞いし売り越しになったと推測されます。
個人投資家の傾向と注意点
次は、私たち個人投資家です。小さく買い越しから、一気に売り越しに転換しました。11月3週の外国人投資家の売り越し幅と類似しています。
予測ではありますが、11月3週に外国人投資家によって売り越され、日経平均株価が停滞したことによって、彼らも手仕舞いしたのかもしれません。
個人投資家は、日経平均株価がある程度停滞すると、そこを天井と判断するのか売り越しが強まる傾向があります。
今回は、日経平均株価が5万円前後を推移していましたので、これ以上上昇するには時間がかかるなどの判断から、手仕舞いしたと想定されます。
ただ、こうなると難しいのが次の動きです。日経平均株価がすっきり上昇していないと、再度個人投資家が動くきっかけが少なくなります。
今週の動向から見ると、動き出すのは、まだ先のようにも見えます。この点をふまえると、次は中立に近い動きになるかもしれません。
日本の機関投資家の今後
最後に日本の機関投資家です。三者の中で唯一買い越しのポジションを取りました。11月3週はわずかに売り越しでしたが、そこから買い越しです。
ただし、まだ明確な買い越しの水準には届きません。夏場から売り越しが続いていた彼らの動きを考えると、ここから年末に向けて積極的に動くことも想定されます。
違う見方をすると、もしここで日本の機関投資家も売り越しに転換するようなことがあれば、株式市場は急落や暴落を起こしかねません。
ですが、現状ではそのような材料が見当たりませんので、彼らも中立に近いポジションに戻るのではないかと予想します。
国内外投資家の売買動向から見た来週の見通し
以上が三者の動向です。全体感としては急落や暴落が起きてもおかしくないバランスでしたので、それが回避されて良かったです。
また、三者を見ると、日経平均株価が5万円前後を停滞していたこともあり、三者ともポジションをどう取るか悩んだ末の結果ではないかとも読み取れます。
私たちのように株トレンド指数も含めて相場分析していれば、ボックス圏の内訳が分かり、比較的ポジティブに展開を捉えることができます。
しかし、日経平均株価だけをもとに相場分析していると、この三者の動きになることも理解できます。
次に出る最新週のデータが、また同じようであれば日経平均株価は、もう少々停滞すると分析します。
反対に、三者が動き出すと状況が一変します。今は、この間ですので、引き続き三者のバランスをチェックしていきましょう。
まとめ:ボックス圏の上値を目指す動きへの最終アドバイス
このように今週の株式市場は、日経平均株価と株式市場全体が、全体感としては連動していましたが、押し目買いの動きの察知については連動していませんでした。
具体的には、先週よりは上昇の勢いは小さいものの、株式市場全体の上昇は日経平均株価の上昇よりも強い状態が続いています。
そのような背景と上昇気味になったときの上振れを考慮すると、来週の日経平均株価の範囲を予想すると、このようになります。
▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:上振れ5万2000円~下値:4万5000円
下値はもう一段上げても良いかもしれませんが、今の日経平均株価の水準をふまえると、ここまでは想定しておいたほうが安全でしょう。
ここからの日本株市場と日経平均株価は、引き続きボックス圏の上値付近を狙う動きが続くと分析します。
ただ、その上昇の勢いはボックス圏を上抜けするようなものではないので、そこまで強い上昇は見込めません。
また、先週発生した小さな上昇も段階的に収束したことから、来週に上抜けするトレンドが発生することは想定しにくいです。
下値に向かって動き出すことは何らかの悪材料が出ない限り、考えにくいです。
この点も考慮すると、やはり週明けもボックス圏の中心から上値を推移しつつ、小さな上昇が発生して上値付近まで上昇することが続くと判断します。
この記事は、独自の株トレンド指数を用いた分析レポートの一部です。すべての予測実績検証は過去の分析レポート一覧からご覧いただけます。
▼ご注意▼ ※1.こちらの分析結果はあくまでも日本株市場全体の傾向をもとにした内容です。個別株の動向と必ずしも一致するわけではありません。あくまでも市場全体の動向として、ご参考くださいませ。 ※2.本記事は2025/12/4(木)時点の株式市場の状況をもとに執筆しました。データや分析内容については、誤差が生じる場合がございます。予めご了承くださいませ。
当記事は、特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、情報提供を目的としています。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。当記事によって生じた損害等について、当社は一切の責任を負いかねます。


