執筆者: 秋山大介|データ・アナリスト| プロフィール詳細
(独自の「株トレンド指数」を開発・運用。需給バランスに基づく分析で定評あり。)
日経平均株価 が一時5万6000円台を回復しました。
米国大統領の発言により地政学リスクが「一時沈静化」し、市場には安堵感が広がっています。
しかし、独自の株トレンド指数を分析すると、日経平均の力強い上昇とは裏腹に、株式市場全体には「ある重し」が残っていることが見えてきました。
引き続き不安定な外部環境ではありますが、これから日本株市場はどのように推移していくのでしょうか。
この記事は、独自の株トレンド指数を用いた分析レポートの一部です。すべての予測実績検証は過去の分析レポート一覧からご覧いただけます。
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そこで今回も相場の動きを数値で見える化した「株トレンド指数」をもとに、今週の株式市場の動向や、来週の日経平均株価の動向や株式市場の見通しについて考えていきましょう。
日経平均株価の上昇ほど市場全体は盛り上がっていない?
こちらをご覧ください。こちらは3/27〜4/9の日経平均株価と株トレンド指数の状況です(株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら)。

株トレンド指数は、以下のような4つの指数で構成されています。
・天井指数|相場全体の上昇トレンドが終焉する傾向を示す(目安:「170」付近)
・底値指数|相場全体が底値に近づき適正株価まで回復する傾向を示す(目安:「220~420」付近)
・押し目買い指数|押し目買い戦略が機能しやすい傾向を示す(目安:「30」に近い水準)
・空売り指数|相場全体の上昇にブレーキが掛かる傾向を示す(目安:「50」付近)
>>株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら
日経平均は4日続伸も「空売り指数」が急上昇
今週の株式市場は、日経平均株価と株式市場全体が連動しているとも取れますが、厳しめに見ると”やや連動していない週”でした。
なぜなら、日経平均株価の上昇ほど株式市場全体は上昇していなかったからです。
日経平均株価は、4日続伸で7.22%上昇しました。一方、株式市場全体は株トレンド指数の状況の通り、それほど目立った上昇が見られませんでした。
むしろ、上昇にブレーキを掛ける空売り指数が急上昇したので「上値が重たい展開」だったと分析します。
反対に言えば、その重しが取れれば日経平均株価の上昇と連動するように上昇し、もっとポジティブな展開だったと判断します。
地政学リスクに急展開が見られたとはいえ、まだ完全に沈静化していないことが、この株トレンド指数の動きに反映されていると分析します。
空売り指数が急増し上昇にブレーキが掛かる
では、この状況をふまえて詳細を見てみましょう。今週の日経平均株価は以下のような推移でした。
- 【4/6】0.55%上昇:2日続伸
- 【4/7】0.03%上昇:前日から横ばい
- 【4/8】5.39%上昇:5万6000円に急上昇(4日続伸)
- 【4/9】0.73%下落:5万5000円台まで下落
今週の日経平均株価は、地政学リスクの急展開により一時5万6000円まで上昇しました。
週の前半は先週末から続伸してはいたものの、1%未満の上昇だったので横ばい状態でした。
そこから急転し4/8に5%以上上昇したことで、一気に5万6000円台に回復です。
日経平均株価を円単位で見ている投資家は、この動きを見て「大幅上昇や急騰」と判断したでしょう。
円単位では約2900円上昇しました。しかし、上昇率は5.39%にとどまり、4/9に続伸しなかったことを考慮すると、いったんここで上昇が止まったと分析します。
または、4/9はいったん勢いが付いてしまったので短い調整に入り、再上昇につながる日とも分析できます。
いずれにしても、日経平均株価が5万6000円台に一時回復したものの、まだ楽観的に受け止めてはいけない状況であると判断します。
しかも、地政学リスクは完全に沈静化したわけではありません。そのあたりが、4/9の日経平均株価の動きにも出ているのかもしれません。
完全に沈静化となれば、6万円台定着に向かって動き出していたときの水準まで再上昇すると予測します。
次は、今週の株トレンド指数の推移を見てみます。今週は以下のような推移でした。
- 【4/6】天井指数「16」まで上昇も先週末から横ばい
- 【4/7】4/6から横ばい
- 【4/8】天井指数「29」まで上昇/空売り指数「49」まで急上昇
- 【4/9】天井指数「15」まで減少/空売り指数「42」まで微減
株トレンド指数を見ると、日経平均株価の円単位の上昇とは違い「それほど動きがない」ことが分かります。
もしくは、前述の通り空売り指数が急上昇していますので「上値が重たい」展開になっていると分析します。
週の前半は日経平均株価と同様に、地政学リスクが不透明な状態を反映した動きでした。先週に続き、無風状態ではありませんが、各指数が横並びに近いニュートラル状態です。
それが4/8に急転し、空売り指数が「49」まで急上昇しました。日経平均株価の動きを考えると、天井指数が上昇しそうですが、あまり伸びていません。
4/9も空売り指数の水準はそれほど下がらず、天井指数の水準も下がっていることから、日経平均株価と違って株式市場全体は上昇していないと判断します。
むしろ、空売り指数の急上昇により上昇勢いにブレーキを掛けられていますので、上昇したくても重しがあって上昇できない状態だと分析します。
このように今週の株式市場は週単位で見ると、日経平均株価の上昇ほど株式市場全体は上昇していないことが分かります。
また、日経平均株価自体も、円単位で見ると急騰しているように見えますが、通常の上昇よりはやや大きい程度に留まっていると判断できます。
よって、全体としては上昇しているように見えますが「重し」によって上昇を抑えられ、上値が重たい展開になっていると分析します。
【分析】株式市場は上昇したいが、まだ上昇転換できない状態
日経平均株価を基準に見ると、地政学リスクの急転により下落前水準に戻ろうとする動きが見られます。
しかし、これまで見た通り、一日の円単位の変動幅で見ると急上昇に見えますが、そこまで上昇していないと判断します。
4/9に小幅下落しているのもふまえると、やはり上値が重たく、そのままスッキリ上昇という状態ではないことが分かります。
この背景には地政学リスクが完全に沈静化したわけではなく、一時的であることが反映されていると分析します。
一方、株トレンド指数を見ると、こちらも同様に、まだ大きな変化がないことが分かります。
4/8の急展開で空売り指数の急上昇は見られますが、それを除くとニュートラル状態よりはトレンドが出てきた程度に留まっています。
楽観的に見れば、天井指数も上昇していますが、日本株市場が好調であった2月と比較すると全く状況が違います。
週単位で見たときと同様、日本株市場全体は、まだそれほど動いていないと分析します。
日経平均株価同様、重しがある状態なので、上昇しようとしているのかもしれませんが、まだ上昇に転換できていない状況だと判断します。
【来週の予想レンジ】上値5万8000円~下値:5万4000円
このように今週の株式市場は期間を広げて見ても、週単位で見たときと同様に、日経平均株価も株式市場全体も、それほど上昇していないことが分かります。
5万6000円台を一時回復など、円単位では節目を超えていることから、大きく上昇している印象を受けるかもしれません。
しかし、実際は地政学リスクが完全沈静化ではないことが重しなのか、地政学リスク発生以降の期間で見ると、大きく上昇していると判断する程度に収めるのが正しい分析だと考えます。
そこで来週の日経平均株価のレンジを予測すると、以下の範囲を推移すると分析します。
▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:5万8000円~下値:5万4000円
先週から下値の水準を上げました。ただし、地政学リスクが完全に沈静化していないので、もし再燃する場合は、この下値を割ることは予測されます。
その場合は、先週までのレンジ予測下値が戻ります。地政学リスクによって株式市場が左右されてしまうので、この点は常に考えておきましょう。
反対に、この地政学リスクの一時沈静化が完全沈静化に向かうと、上値に向かって動き出すことが予測されます。
これまでの分析の通り、今は地政学リスクが一時的な沈静化であることが、上昇しきれない「重し」になっています。
だからこそ、一時的ではなく完全に沈静化に向かうと、その重しが外れ上昇しやすい環境に戻ります。
また、そのときは水準が段階的に上がり、上値の到達時間はとても短いと予測します。同じ変動率でも円単位の幅が大きくなりますので、数日間で到達もあり得ます。
まだ地政学リスクの重しにやられている状況ですが、重しが外れた場合のシナリオとして想定しておくと良いでしょう。
【最新】投資主体別売買動向と需給バランス
補足としての日本株市場の根底部分である株式市場全体の最新の需給バランスも見ておきましょう。
・外国人投資家:大きく売り越し → 大きく買い越しに転換(↗)
・個人投資家:わずかに売り越しまたはニュートラル → 小さく売り越し(↘)
・日本の機関投資家:買い越し → 買い越しが下がる(↘)

最新週は外国人投資家の動きが一変しました。一方、国内の投資家はポジションにそれほど大きな変化が見られません。
この点から、最新週は外国人投資家によって需給バランスが決められた週だったと言えます。では、各投資家の詳細を見てみましょう。
外国人投資家の大規模買い越しが意味すること
外国人投資家は、3週連続売り越しから買い越しに転換しました。3月4週は大規模な売り越しでしたが、最新週ではその規模を上回る大規模の買い越しです。この水準は2024年4月から見て最も大きな水準です。
このときの日経平均株価は、まだ5万3000円台でした。もしかすると、この段階で外国人投資家は地政学リスクの一時沈静化の情報を掴んでいたのかもしれません。
そうでもない限り、大規模の売り越しから、それを上回る買い越しに転換するのは難しいでしょう。
国内の投資家は、最新週も3月4週に続き、ポジションが大きくありません。こういった動きからも、彼らは先に情報を掴んでいた可能性があります。
または、地政学リスクが更に悪化する可能性がありましたので、ポートフォリオのバランスを日本株重視に変更した可能性もあります。
どちらも予測の範囲ではありますが、この急展開はなかなか起きることではありません。
来週出るデータは、地政学リスクが一時的に沈静化したあとのものが出ます。この動きも見ることで、彼らがどのような方向に進もうとしているか読み取れるでしょう。
個人投資家は地政学リスクに左右された状態
次は、個人投資家です。3月4週よりも売り越しが強まりました。しかしながら、先週がとても小規模であったこともあり、強まったとはいえ、通常の売り越しです。
3月に入ってからの彼らの動きを見ていると、やはり地政学リスクに右往左往している印象を受けます。
来週の最新週データでどうなるかの部分もありますが、引き続き地政学リスクのニュースに一喜一憂するようなポジションを取ると推測します。
国内機関投資家はお化粧買いが終わり通常の動きに戻る
最後は、国内の機関投資家です。買い越しが弱まりました。しかし、彼らは年間を通じて、あまり大きく動かないことをふまえると、通常運行だと判断します。同時に、これまで続いたお化粧買いが終わったと判断できます。
一時は地政学リスクを気にしているような動きでしたが、あまり気にしていない動きにも見えます。
もしくは地政学リスクに左右されることが分かっているので「ニュートラル」を決めて動いているのかもしれません。
そういった意味では、次にでる最新週データが地政学リスク一時沈静化のタイミングですので、ここの動きがどうなるか注目でしょう。
国内外投資家の売買動向から見た来週の見通し
以上が三者の動向です。国内外の投資家で動きが大きく分かれました。外国人投資家は2024年4月以降で最大規模の買い越しです。反対に国内の投資家は、あまり変化がありませんでした。
実際のところは分かりませんが、この動きの違いをふまえると、地政学リスクに関して取れる情報が、国内外で違っている可能性があります。
もし、それが本当であれば外国人投資家は、地政学リスクの完全沈静化を見越して動きはじめていると予測します。
まだ現時点では明確な判断はできませんが、今後の展開を予測するのは、外国人投資家がどのような動きを見せるかを把握することが最重要だと判断します。
もちろん、彼らの動きに追随して国内の投資家が動き出すことも考えられます。そういった意味では、来週発表される最新週データが、1つのポイントになるでしょう。
まとめ:来週の予想レンジと「重し」が取れた後のシナリオ
このように今週の株式市場は、需給バランスから見ても急展開が予測されます。
外国人投資家の大規模買い越しは、先週時点のものですが、地政学リスクの一時沈静化を考慮すると、今週さらに動きがあったかもしれません。
ただし、これまで見てきた通り、まだスッキリ上昇していないということは、この展開や株価の上昇を抑える重しがあるのだと考えます。そして、その重しが地政学リスクなのだと分析します。
そういった背景を踏まえて、来週の日経平均株価のレンジを予測するとこのようになります。
▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:5万8000円~下値:5万4000円
地政学リスクに握られた状態であることの前提は変わりありません。今は、一時沈静化なので、万が一再燃すると、この下値を割ることも想定されます。
まだ楽観的にはいけないタイミングですので、再燃リスクがあることは引き続きふまえておきましょう。
反対に、もしこの重しがなくなった場合は、上昇にブレーキを掛けるものがなくなるので、一気に上値を目指して上昇する展開が予測されます。
その場合は、日経平均株価の円単位の水準がどんどん上がります。同じ変動率でも円単位が大きくなるので、円単位の変動スピードが上がります。
もし重しが取れた場合は、展開のスピードが急に上がりますので、事前に想定しておきましょう。
まだ地政学リスクに握られた状態ですので、明確な予測は難しい状態が続いています。
しかし、一時沈静化を見せたことで、上下のどちらに進むとしても、各シナリオの展開は読みやすくなり不透明感が変化しました。
こうなると、ここからは地政学リスクの再燃の悲観的シナリオを想定しつつ、中間・楽観シナリオである日経平均株価の下落前水準回復も想定する必要が出てきました。
しばらくニュートラル状態が続きましたが、地政学リスク次第でここから展開が変わるかもしれません。
上記の複数のシナリオを用意しながら、もし上昇したときはそのスピードに乗り遅れないように準備を進めていきましょう。
この記事は、独自の株トレンド指数を用いた分析レポートの一部です。すべての予測実績検証は過去の分析レポート一覧からご覧いただけます。
▼ご注意▼
※1.こちらの分析結果はあくまでも日本株市場全体の傾向をもとにした内容です。個別株の動向と必ずしも一致するわけではありません。あくまでも市場全体の動向として、ご参考くださいませ。
※2.本記事は2026/4/9(木)時点の株式市場の状況をもとに執筆しました。データや分析内容については、誤差が生じる場合がございます。予めご了承くださいませ。
当記事は、特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、情報提供を目的としています。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。当記事によって生じた損害等について、当社は一切の責任を負いかねます。
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