執筆者: 秋山大介|データ・アナリスト| プロフィール詳細
(独自の「株トレンド指数」を開発・運用。需給バランスに基づく分析で定評あり。)
日経平均株価 は5万1000円を再び割ったものの5万円の高値圏を維持しています。
しかし、今週は最大でも0.9%の変動と1%未満の変動が続き、方向感がないというより膠着した水平状態が続いています。
一方、株式市場全体は日経平均株価の推移とは乖離し、株式市場全体を牽引するような上昇ではないものの、小さな上昇が発生していると判断します。
このように、日経平均株価と株式市場全体の動きが乖離し、日経平均株価だけを見ると、次の展開が全く読めない状況が続いています。
本レポートでは、相場の動きを数値で見える化した独自の「株トレンド指数」、および国内外投資家の最新需給バランスをもとに、来週の日経平均株価の予想レンジ(上値5万2000円)と市場の見通しを徹底分析します。
【株トレンド指数で分析】日経平均と市場全体「乖離」の検証
こちらをご覧ください。こちらは11/28〜12/11の日経平均株価と株トレンド指数の状況です(株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら)。

株トレンド指数は、以下のような4つの指数で構成されています。
・天井指数|相場全体の上昇トレンドが終焉する傾向を示す(目安:「170」付近)
・底値指数|相場全体が底値に近づき適正株価まで回復する傾向を示す(目安:「220~420」付近)
・押し目買い指数|押し目買い戦略が機能しやすい傾向を示す(目安:「30」に近い水準)
・空売り指数|相場全体の上昇にブレーキが掛かる傾向を示す(目安:「50」付近)
>>株トレンド指数の算出ロジックと運用実績はこちら
株トレンド指数の分析:日経平均株価と市場全体の乖離あり
今週の株式市場は、日経平均株価と株式市場全体が再び先週と変化し”全く連動していない週”でした。週単位でここまで連動していないのは珍しいです。
具体的には、日経平均株価は水平状態でしたが、日本株市場全体は小さく上昇と、連動性が全くありませんでした。
ご覧のとおり、日本株市場が小さく上昇していることは、日経平均株価の推移だけでは判断できず、株トレンド指数を見ることで判断できるものでした。
ただ、あくまでも小さな上昇です。上昇トレンドが発生したと言えるほどの上昇ではないので、実際の損益にはそれほど影響がないと考えます。
一方で、株トレンド指数を見なければ、これは全く分からない情報です。その点をふまえると、日経平均株価だけを基準に相場分析する人と、株トレンド指数も使って分析する人では、相場観に大きな差異がでた週だと判断します。
日経平均株価は水平状態も株式市場全体は小さく上昇
では、この背景をふまえて詳細を見てみましょう。週初め12/8の日経平均株価は0.18%上昇しました。円単位では90円上昇です。ほぼ0%に等しい水平状態でした。
株トレンド指数を見ると、日経平均株価とは違って、株式市場全体に動きがあると判断できます。
上昇傾向を示す天井指数は22まで上昇しました。明確な上昇とは言えませんが、先週末12/5に天井指数がいったん10まで下がったことを考慮すると、上昇していることが分かります。
ただし、同時に上昇にブレーキを掛ける空売り指数が25まで上昇しました。これにより、同時の上昇は「上昇したいが抑えられた状態」だったと分析します。
12/9の日経平均株価は、0.14%上昇しました。円単位では73円上昇です。前日同様、ほぼ0%に等しい水平状態でした。
また、2日続伸とはいえますが、両日合わせても1%未満の上昇率です。ここからも水平状態であることが分かります。
株トレンド指数を見ると、天井指数の水準が「22→27」へ上昇しました。小さな上昇で前日とほぼ変わりありません。
見方によっては、日経平均株価に連動して水平状態とも読み取れますが、株トレンド指数ではネガティブな水平状態ではなく「前日の上昇を株式市場全体が維持」と分析します。
なお、この日も上昇にブレーキを掛ける空売り指数の水準が天井指数に近いことから、前日同様「上昇したいが抑えられた状態」だったと判断できます。
12/10の日経平均株価は0.1%下落しました。円単位では52円下落です。これもほぼ0%に等しい変動ですので、水平状態でした。
株トレンド指数を見ると、天井指数の水準が「27→45に上昇」しました。この水準に到達するのは、11/28以来です。
株式市場全体を牽引するような上昇ではありませんが、この上昇は先週時点で予測された「押し目買い」の動きに該当すると判断します。
ようやく空売り指数の水準も下がり、上昇できた状態です。よって、日経平均株価との推移とは乖離し、株式市場全体は小さく上昇していることが分かります。
12/11の日経平均株価は、0.9%下落しました。今週の中では最も大きな変動です。円単位では453円下落です。
変動率で見ると、引き続き水平状態で推移しています。しかし、日経平均株価を円単位で捉える人は、約450円ということもあり「下がった!」と反応するかもしれません。
しかし、実態は変動率の通り週初めから続く水平状態です。
株トレンド指数を見ると、天井指数の水準が「45→12」に一気に下がりました。これにより、今週の株式市場全体の上昇は終わったように見えます。
しかし、同日のポイントは、再び「押し目買い」です。押し目買いの水準が再び2桁の「11」まで上昇しました。
下落傾向を示す底値指数の水準が12になったことは多少気になりますが、天井指数と押し目買い指数の発生状況から見て、再び押し目買いの動きがあることを示唆しています。
ただし、現時点では、押し目買い指数の2桁水準が1日だけなので、そう判断することはできません。
あくまでも、週明けの押し目買い指数の水準次第では、株式市場全体が再び押し目買いの動きをする可能性があると判断します。
【来週の予想】日経平均株価の予想レンジ(52,000円~46,000円)とシナリオ
日経平均株価を基準に見ると、ボックス圏の上値付近に向かって推移しましたが、いったん水平状態になっていることが分かります。
まだ下値付近に向かって動き出しているわけではないので、ネガティブに捉える必要はないでしょう。
よって、日経平均株価のボックス圏の範囲は、上値の誤差も含めて「上値:5万2000円~下値:4万6000円」と判断します。
先週時点で上昇勢いが不足していました。そこから、さらに上昇することは考えにくい状況だった通り、今週はボックス圏の中で水平状態が続いています。
株トレンド指数を見ると、日経平均株価と乖離し、株式市場全体は小さく上昇していることが分かります。
先週押し目買い指数が上昇しましたので、その押し目買いの動きが今週の株式市場全体の動きだったと分析します。
ただし、勢いのある上昇ではありませんので、株式市場全体も目立った動きなくボックス圏を推移すると予測されます。
来週の日経平均株価の予想シナリオとレンジ
このように、今週の日本株市場は、日経平均株価と株トレンド指数の推移が乖離しているものの、両者ともボックス圏を推移していることには変わりありません。
しかしながら、株式市場全体はボックス圏の上値付近を目指して動くことが続き、日経平均株価は水平状態です。
同じボックス圏内での推移ではありますが、両者に違いがあることは把握しておくと良いでしょう。
なお、そのボックス圏の範囲を改めて整理すると、引き続き日経平均株価は誤差を含めて以下の範囲を推移すると分析します。
▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:5万2000円~下値:4万6000円
日経平均株価は、この水準までくると同じ変動率でも円単位の変動が大きくなります。それを考慮すると、変動率の感覚では5万円ですが、円単位では+2000円程度の誤差が出ると考えます。
下値は水準を1000円上げました。先週時点では念のため様子を見ましたが、目立った動きがない状態が続きましたので、水準を上げました。
来週の日経平均株価は、この範囲を推移すると分析します。ぜひ、この範囲を目安に動向を見ていきましょう。
ただし、日経平均株価だけでは、今週のように株式市場全体の動きまでは読み取れません。株トレンド指数も合わせて動向を確認していきましょう。
最新の需給バランスから見る投資家動向と市場の勢い
補足としての日本株市場の根底部分である株式市場全体の最新の需給バランスも見ておきましょう。
・外国人投資家:売り越し → わずかに買い越し(ほぼ中立)に転換(↗)
・個人投資家:売り越し → 買い越しに転換(↗)
・日本の機関投資家:わずかに買い越し → 買い越し弱まる(↘)

三者をまとめると、全体の需給バランスは「買い越し」です。ただし、上のグラフの通り全体のポジションは小さいです。先週の1/3程度です。
このポジションですと、株式市場はほとんど動きません。実際に、日経平均株価も5万円付近から、ほとんど動きませんでした。
よって、最新週は全ての投資家が動き出すことはなく”様子見状態”だったと分析します。
では、改めて各投資家の詳細を見てみましょう。
外国人投資家の動きとその示唆
外国人投資家は、11月4週は売り越しでしたが、中立に近いわずかに買い越しに転換しました。
外国人投資家の傾向を見ると、2~3週売り越しはよく見られます。この傾向の通り、今週は中立には近いものの売り越しを脱しました。
ですが、明確に買い越しではありませんので、再び売り越しに戻る可能性もあります。そう考えると、外国人投資家はそろそろ年末に向けたポジション整理をしているのかもしれません。
例年12月上旬から中旬にかけて盛り上がり、そこからポジション整理に向かう動きが見られます。今年は暦のバランスから、来週あたりがその期間に該当するかもしれません。
その点を考慮すると、需給バランスのプレイヤーがこのまま縮小すると、来週から年末にかけて株式市場に動きが出てくるかもしれません。
個人投資家の傾向と注意点
次は、私たち個人投資家です。買い越しに転換しました。ただし、まだ小さいポジションですので、売り越しがいったん終わった程度と捉えるのが良いと判断します。
ただし、今週の日経平均株価のように、停滞が続くと再び売り越しへ戻ることも考えられます。
個人投資家は、「日経平均株価=株式市場」と捉える傾向があります。それをふまえると、今が高値圏であることから、年末にかけて利益確定に入ることも想定されます。
一方で、個人投資家は年末にかけて動きが活性化し、日本株が個人投資家によって動くこともあります。
そういったことをふまえると、私たち個人投資家の動きは、先入観を持たず慎重に見ていくのが良いと考えます。
日本の機関投資家の今後
最後に日本の機関投資家です。ただし、まだ小さいポジションですので、中立と言っても良いかもしれません。
こちらも外国人投資家と同様に、年末に向けたポジション整理を行なっているのかもしれません。
日本の機関投資家は、もともと売り越しが多いので、それを考慮すると年末に向けて売り越しが加速する恐れもあります。
そのような意味では、三者の中で下落リスクの要因になる可能性があります。
年間を通じて動きが読みにくいのが、この日本の機関投資家です。その点もふまえ、今年の年末は、彼らの動きを慎重に見ていく必要がありそうです。
国内外投資家の売買動向から見た来週の見通し
以上が三者の動向です。全体としては多少買い越しではありますが、内訳を見ると中立と考えたほうが良いかもしれません。
つまり、ここからは上下のどちらにも需給バランスが変動する可能性があり、それに株式市場が連動することもあるということです。
大崩するようなことは考えにくいですが、この需給バランスを見ると、日本株市場は年末にかけて「上昇よりも下落が強いが、大きな変動なく水平維持」が予測されます。
需給バランスは、トレンドと違って変わりやすい側面もあります。ただ、ポジティブに見るよりは、中立よりややネガティブに見ておいたほうが良いでしょう。
まとめ:ボックス圏の上値を目指す動きへの最終アドバイス
このように今週の株式市場は、日経平均株価と株式市場全体の動きに乖離がありました。日経平均株価は水平状態だが、株式市場全体は小さく上昇です。
しかしながら、株式市場全体の上昇は株式市場を牽引するようなものではないので、引き続きボックス圏の上値付近を狙う程度の上昇が発生すると分析します。
この背景と上昇気味になったときの上振れを考慮すると、来週の日経平均株価の範囲は、このようになると予想します。
▼来週の日経平均株価の予想レンジ
上値:上振れ5万2000円~下値:4万6000円
下値は水準を1000円上げています。先週時点では慎重に見ていましたが、今週の水平状態は「底堅い」側面もあります。それをふまえて、水準を上げました。
なお、日本株はここから年末にかけて上昇しやすい傾向があります。ですが、現実の株式市場の動きを見ると、膠着状態までにはなっていませんが、株価が動きにくい状態に見えます。
需給バランスも中立よりややネガティブであることから、上値抵抗線を明確に突破する強いエネルギーは不足していると判断します。
その点も考慮すると、今後はボックス圏の上値付近を狙う動きだけでなく、ボックス圏の中心に向かう下落や、下値付近に向かう下落も想定されます。
一方で、確率はまだ判断できませんが、12/11の押し目買い指数の水準を見ると、株式市場全体には、今週のような小さな上昇があることも想定されます。
どちらつかずように見えるかもしれませんが、まさにこれがボックス圏特有の推移ですので、株トレンド指数と需給バランスの両面から慎重に動向を見ていきましょう。
この記事は、独自の株トレンド指数を用いた分析レポートの一部です。すべての予測実績検証は過去の分析レポート一覧からご覧いただけます。
▼ご注意▼ ※1.こちらの分析結果はあくまでも日本株市場全体の傾向をもとにした内容です。個別株の動向と必ずしも一致するわけではありません。あくまでも市場全体の動向として、ご参考くださいませ。 ※2.本記事は2025/12/4(木)時点の株式市場の状況をもとに執筆しました。データや分析内容については、誤差が生じる場合がございます。予めご了承くださいませ。
当記事は、特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、情報提供を目的としています。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。当記事によって生じた損害等について、当社は一切の責任を負いかねます。


